熱にうなされて夢を見た。どろどろした温泉地獄に入れられそうになっていた。その時、親友の声が「ここに来い」と引き戻してくれた。唐津市の古賀吉光さんが、がん治療の思い出を振り返っている◆60歳を目前に、膀胱(ぼうこう)上皮内がんが見つかった古賀さんは、患部を摘出し人工膀胱となった。生活は不便でも家族のために生きる選択だったが、手術の傷が原因で人工肛門にもせざるを得なかった。社会復帰のめども立たず入院が続く。「何の罰なのか…」と涙する毎日だった◆ふさぎ込む気持ちを前向きに変えてくれたのが、家族や医療スタッフの支えだった。それから「ポジティブにアクティブに」を信念に、2年後には欧州旅行へ出かけた。再発も経験しながら、現在は県内の中高生に自身の体験を語り、啓発教育に力を注ぐ◆佐賀市のがん対策NPOクレブスサポート(電話0952・23・8231)がまとめた体験記『がんとともに生きる佐賀』には、古賀さんをはじめ県内の26人が手記を寄せている。がんを初期に克服した人、再発・転移にもめげず治療を続ける人、闘病を終えた遺族…。病気を受け止め、悩みつつ治療法を選択する率直な思いが、実名でつづられている◆2人に1人が、がんになる時代。絶望ではなく、回復の希望を探したい。身近な隣人たちの記録を道しるべに。(桑)

このエントリーをはてなブックマークに追加