2022年度の九州新幹線長崎ルート暫定開業に向けて、武雄市の動きが加速している。本年度を「西九州のハブ都市」を目指す「元年」と位置づけ、4月に「ハブ都市推進室」を新設、開業をにらんだまちづくりや周辺の観光地との連携などを具体化している。

 ハブ都市推進室は、商工課と観光課を統合した商工観光課内に設けた。新幹線開業に深く関係する商工、観光部門を一体化して情報共有や連携を密にする一方、県内外の周辺観光地や関係機関との連携、開業に合わせたまちづくりなどを担う部署として新設した。

 春以降、取り組んでいる主な事業を挙げてみる。まちづくりでは「観光ストリート」づくりに着手した。5月に、市役所と図書館を結ぶ通りに71店が並んだ「まちあるきマルシェ」を初開催。今後も駅や武雄温泉、図書館などを結ぶ通りで、街歩きが楽しめるベンチなどの仕掛けやイベントを考える。夜の観光の魅力づくりを考える市民参加の委員会も近く立ち上がる。「夜も楽しめる武雄」を目指してアイデアを出し合う。

 周辺の市町や観光地との連携も進む。7月に西松浦郡有田町と嬉野市の3市町で「連携会議」を設置し、焼き物や温泉などの共通資源を生かした観光PRや地域づくりを推進する。鹿島市、嬉野市、伊万里市、有田町、長崎県波佐見町とは「武雄から西九州の旅へ」と銘打った観光ポスターとパンフレットを作成。7月11日から10月まで、長崎空港-武雄間で予約制の乗り合いタクシーも運行している。

 さまざまな新幹線関連事業が加速する一方で、開業までに何をどこまで準備できるかを心配する声もある。「鉄道高架下をどう活用するか」「温泉情緒を感じさせる施設や仕掛けは」「西九州の玄関口として周辺観光地との連携の具体策は」などの課題についてだ。

 武雄にとって、暫定開業の期間は特急も新幹線も全ての列車が停車するという大きな利点がある。ただ、その期間に十分なアピールができなければ、単なる乗換駅になってしまう。高架下活用や観光施設整備は簡単にはできない。開業が3年後に迫るなか、新幹線が走り始めた時の武雄の姿は、まだ思い描けない状況だ。

 多くの課題を打開するために、民間の力を引き出すことが欠かせない。今月、官民組織「新幹線活用プロジェクト」や武雄商工会議所のメンバーが、まちづくりに取り組む大村市を視察した。こうした動きを重ねて関心を高めることも大切だ。今の時代は行政主導ではなく民間活力を生かす「官民協働」が不可欠で、市もそうした方針を示してきた。行政任せにしない市民の意識も、新幹線事業を進める中で育てたい。

 周辺観光地を上手に巻き込むことも重要だ。民間の力も生かして、唐津や伊万里、佐世保や平戸、長崎市などとの連携を急ぎ、西九州の魅力を玄関口の武雄でどんな形でアピールするかを詰める作業も欠かせない。西九州が一体となる体制づくりが急務だ。

 “全便停車”のメリットを享受するためにはスタートダッシュが欠かせない。町を磨き、西九州の玄関口としての機能を充実して、「長崎への乗換駅」ではなく「西九州の玄関」という位置を確立したい。(小野靖久)

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