鳥栖-神戸 後半13分、相手ゴール前に攻め込む鳥栖FWトーレス(中央)=鳥栖市の駅前不動産スタジアム(撮影・山田宏一郎)

 最後のその瞬間まで、いつも通り勝利を目指して貪欲にプレーし続けた。元スペイン代表FWトーレスの引退試合は、タレント軍団・神戸に今季ワーストの6失点を許す大敗となり、花道を飾ることはできなかった。

 「フェルナンド(トーレス)はサガン鳥栖での引退を選んでくれた。勝って送り出そう」。チームメートたちの気合が空回りしたのか、試合開始22分までに3点を奪われ、大勢は決した。

 ただ、トーレスは大量リードを奪われた厳しい展開の中でも、最後までゴールを狙い続けた。「前に前に」というようなジェスチャーで鼓舞するなど、いつも以上に味方に声を送った。

 リーグ戦で90分間フル出場したのは、4月20日の松本山雅戦以来約4カ月ぶり。終盤はさすがに疲労もあったのか、後半30分にはスライディングした際、左足がつったようなそぶりを見せた。今季最多タイとなる3本のシュートを放ったが、いずれも力が入りすぎたのか、枠を捉えられなかった。

 悔しい結果にはなったが、こんな光景を佐賀で見られると誰が予想しただろうか。試合前、キャプテンマークを巻いたトーレスと、幼い頃からの盟友・神戸のMFイニエスタがピッチ上で熱い抱擁を交わした。サッカー界に刻まれる名シーンに、スタジアムは大いに沸いた。

 何よりも勝ちにこだわってきたトーレス。引退セレモニー時にもほとんど笑顔がなく、引き締まった表情だった。勝利に貪欲なその姿勢は、鳥栖に脈々と受け継がれていく。最後までいつもと変わらない勇姿をピッチにもサポーターの心にも刻んでくれた。

このエントリーをはてなブックマークに追加