23日の引退試合に臨むサガン鳥栖のフェルナンド・トーレス(左)=鳥栖市の駅前不動産スタジアム(3月6日の仙台戦から)

 サッカー・J1サガン鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンド・トーレス(35)が23日のホームゲーム、ヴィッセル神戸戦を最後に引退する。世界屈指のスター選手は昨夏、電撃的に日本にやってくると、鳥栖サポーターだけでなく多くのJリーグファンに愛された。18年のキャリアを締めくくるラストゲームで“神の子”はどのようなプレーを見せるのだろうか。世界が注目している。

 トーレスが積み重ねてきた実績はまばゆいばかりだ。アトレチコ・マドリード(スペイン)やリバプール、チェルシー(ともにイングランド)、ACミラン(イタリア)といった名だたるクラブで活躍。スペイン代表としても2010年のワールドカップ南アフリカ大会優勝や、08年、12年の欧州選手権連覇に貢献した。「エルニーニョ(神の子)」の愛称で親しまれ、今も絶大な人気を誇る。

 スーパースターの彼が移籍先に選んだというだけで、世界中のサッカー関係者がJリーグに、サガン鳥栖に関心を寄せた。昨年7月10日、鳥栖への加入が発表されると、そのニュースは衝撃を持って世界に伝えられた。「なぜ、日本なのか。それも地方クラブの鳥栖に?」。会見では真っ先にこんな質問が飛んだ。トーレスが世界のサッカー界においていかに特別な存在かを物語る光景と言えよう。

 昨季は後半戦17試合に出場し3得点。2年目の今季はさらなる活躍を誓ったが、度重なるけがに泣いた。世界的なストライカーにすれば不本意な成績かもしれない。しかし、チームが2年連続で残留争いに巻き込まれる中、貢献度は数字以上に高かった。

 印象に残る場面がある。チームが失点し、集中力の欠如から連続して失点を許したときだ。普段は何ごとにも紳士的なトーレスが、必死の形相で仲間を鼓舞し、自らも相手選手と激しく競り合った。多くの人がトーレスにひきつけられる理由は、技術だけでなく、勝利への執念やチームファーストの心意気なのかもしれない。

 そんな偉大な選手が鳥栖で引退を決断したことにはあらためて頭が下がる。6月23日の会見で引退の理由が体力的な問題などにあると話したが、同時に、常に熱心に鳥栖を応援するサポーターに対し感謝の思いを繰り返した。鳥栖のために奮闘するトーレスを、サポーターが尊敬の念を込めて後押ししたからこそ、絆が生まれた。

 23日の引退試合では幼い頃からの親友、イニエスタらスペイン勢と相対する。鳥栖、神戸ともに下位に低迷する中、負けられない真剣勝負。トーレスが先発するのか、途中出場するのかは分からないが、ピッチに立てば勝利のために持てる力を振り絞ってくれるはずだ。かなうなら、ゴールを決めて現役生活に終止符を打ってほしい。(市原康史)

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