全盲のエッセイスト三宮麻由子さんは花火が好きだという。「火の色がわからないのに、どうして?」と不思議がられるが、〈あの小気味よい音の中に、ある種の旋律をみつけるのがたまらないのだ〉(『そっと耳を澄ませば』)◆目の前でドンと破裂した尺玉が、ヒュウと夜空へ舞い上がる。破裂音が空一面に広がると、はるか上空で火玉がポッとはじける。〈空の高さの音だ。星とは、あんな高さにあるのだろうか〉。「世界が広がる」とは、こんなときめきを言うのかもしれない◆視覚障害者が映画を観たら、どんな世界が広がるだろう。ストーリーを理解できるよう、市民ボランティア「みないろ会」が自分たちで音声ガイドを付けた短編ドキュメンタリー「ひいくんのあるく町」が24日午後1時から、佐賀市のシアター・シエマで上映される◆近年は配給大手の人気作なら、スマホのアプリで音声ガイドを聞くことができる。そこからこぼれ落ちた良質な作品を、誰もが楽しめるようにする試みである。視覚、聴覚障害を持つ当事者も関わっている◆映像を言葉だけでいかに簡潔に表現するか。生まれつき目の見えない人に色や形をどう説明すべきか。そんな試行錯誤を重ねた上映作は、「他者」に思いを寄せる意味を語りかけてくるだろう。入場予約は電話0952(27)5116へ。(桑)

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