ベトナムから来日し、実習を続ける左からトアさん、ディエムさん、ホアさん、ホアイさん=小城市の野村畜産

慣れた手つきで子豚の世話をするホアさん(右)とディエムさん=小城市の野村畜産

 天山の麓、佐賀平野が眼下に広がる小城市の養豚場で10代と20代のベトナム人女性4人が働いている。いずれも外国人技能実習制度で来日し、約3千頭の子豚や母豚の飼育に励む。外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、賃金未払いや違法な長時間労働などの問題が表面化。制度が掲げる理念と現実の乖離(かいり)が指摘される中、4人で支え合って地域との交流も深めながら、「共生」への模索を続けている。

 市街地から山道を登って車で10分ほど。野村秀利社長(55)ら家族3人が経営する野村畜産が、実習生たちの仕事場だ。4人は2016年9月から今年4月までに来日、豚舎近くの一軒家に住み込み、平日の午前8時半から午後5時半まで実習を続ける。

 餌やりや種付け、病気予防のワクチン接種…。仕事の内容は幅広く、生まれたばかりの子豚を長崎県の食品メーカーに出荷するまで従業員と同じ作業を担う。「日本語を熱心に学んで、自分の考えも言える。車の運転以外は何でも任せられる」。野村社長は4人の働きぶりをこう評価する。

■人手不足解消

 野村畜産が実習生の受け入れを始めたのは、人手不足が要因だった。豚舎を広げた4年前、日本人の男性2人を雇ったが、いずれも数年で辞めていった。その後、求人を出しても集まらず、実習生を派遣する福岡県の管理団体に頼った。

 技能実習制度は、途上国への技能移転を掲げて始まった。だが、実習を始めて3年近くになるホアさん(23)は「お金を稼ぐために日本に来た」と率直に話す。大学を出て昨年6月に来日したトアさん(24)も「お金をためて、母国で日本語を使った仕事をしたい」と目標を語る。

 家族と会えない寂しさをのぞかせながらも、4人の表情は明るい。実習の苦労を聞くと、「言いたいことは何でも言うから、社長が一番困っている」と、ホアさんは笑って返す。集落の清掃や食事会、祭りの誘いにも進んで応じ、近くで農業を営む男性(68)は「高齢化が進む地域に元気をくれる」と話す。

■受け入れ責任

 県内の外国人労働者は昨年10月で5258人。人手不足を背景にこの5年で倍増した。その一方で外国人を「安価な労働力」とみなし、酷使してきた負の側面が浮き彫りになっている。

 野村社長は実習生を受け入れる際、その家族とベトナムで対面した。ある父親は「娘を頼む」。目に涙をため、何度も手を握ってきた。「大切な子どもを預かる責任の重さを痛感した」と野村社長。同世代の子どもを持つ親として、使い捨てるように働かせることはできないと強調する。

 ホアさんと、同じく実習3年目のディエムさん(27)の2人は9月上旬、実習を終えて帰国する。休日には社長や従業員と一緒にドライブに出掛けた。豚舎の外でも思い出ができたが、3年ぶりの家族との再会が一番の喜びという。

 野村社長は「彼女たちのおかげで楽しく仕事を続けられている」と感謝し、「できれば、ずっとここにいてほしい」。かみしめるように言葉をつないだ。

 

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