観光客に砂を掛ける桃山浩美さん=別府市上人ケ浜町の別府海浜砂湯、撮影・椎原新二

 別府湾を望む砂浜の一角で、サクサクと砂をかく。

 大分県別府市上(しょう)人(にん)ケ浜(はま)町の市営「別府海浜砂湯」。砂掛けマイスターの桃山浩美さん(55)が「砂加減はどうですか」と語り掛けると、上気した顔の男性客が「ちょうどいいですね」と気持ちよさそうに目を閉じた。

 そばに湧き出る温泉を地下のパイプに通して温めた砂は40度前後。鋤簾(じょれん)と呼ばれる道具を使い、浴衣姿で寝た客に手際よく載せる。1回にすくうのは約4キロ。何度も繰り返し、数分後には頭だけ残してすっぽり埋める。

 「お客さんの体がポカポカになるのに比例して、私の体も熱々」と汗びっしょりだ。

 一見、単純な作業にも見えるが、「体の大きさや熱さの好みによって砂の量、温度を調節するのがプロの技」。砂と体に隙間をつくらないのがこつで、砂が密着することで全身が温まり、マッサージ効果もあるという。

 元々は主婦だった。2006年、子どもが幼稚園に入ったのを機に「砂掛けさん」に応募した。全国屈指の猛暑地として知られる同県日田市の出身。暑さには自信があったものの、砂湯は屋外でエアコンもない。「夏がこんなに大変だとは考えていなかった」

 13年には優れた接客態度や技量が認められ、砂湯のPRや後進の育成を担うマイスターの認定を運営団体から受けた。11人いる砂掛けさんのリーダーを務め、18年度は5万4千人の入浴客を迎えた。近年はタイやシンガポールなど、アジア圏のファンが増えている。

 今秋はラグビーワールドカップで大勢の観光客が来県する。「スタッフ一同、技術を磨いて最高のおもてなしをしたい」

 世界に“おんせん県”の魅力を伝えようと思っている。(大分合同新聞報道部・三井祥聖)

 

【メモ】 別府海浜砂湯は1986年にオープン。最大12人が同時に利用できる。入浴料1030円。3~11月の営業時間は午前8時半~午後6時。予約不可。休館日は第4水曜日。問い合わせは電話0977(66)5737。

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