まんじゅうは通常の「あんなしまんじゅう」「あんいりまんじゅう」のほか、「よもぎまんじゅう」や「パンプキンまんじゅう」などバラエティー豊か

蒸し上がった大量の岸川まんじゅう。選別作業の後に袋詰めされる=多久市北多久町の森上商店

 佐賀県のほぼ中央にある天山の麓、多久市北多久町の岸川地区に伝わる「岸川まんじゅう」。直径は10センチほどで、その大きさに驚く人も多い。こうじと米、水だけで発酵させる昔ながらの作り方を守りつつ、あん入りやヨモギ、カボチャを生地に練り込んだものなど種類は豊富。地域の食文化を伝える名物として、県外から買い求める客もいる。

 伝統の味を受け継いでいるのが、岸川地区で砂糖やたばこ、菓子などを販売していた森上商店。店主の森上公子さん(81)が1988年に菓子製造の許可を得て店頭に並べた。

 岸川まんじゅうの歴史は古い。江戸時代後期に編さんされた地誌「丹(たん)邱(きゅう)邑(ゆう)誌(し)」には「麦まんじゅう」の名前で登場し、「岸川の産、あんなけれどもその味よきなり」と記されている。山あいのため、わずかしか取れない米の代用として各家庭で作られ、親から子、孫へとつながれてきた。

 森上さんがまんじゅうの販売を始めたのは、核家族化や食生活の多様化が進み、その伝承が途絶え始めたころ。「なくしちゃいかんよね」。常連客だった学校の先生の一言が、商品化のきっかけになった。

 「かむほどに、ほのかな酒の風味が広がる」という生地は、じっくりと発酵させた「まんじゅう酒」に小麦粉と塩、砂糖を混ぜて作る。温室などで約10時間寝かせて具材を入れ、多い日には千個以上を早朝、一気に蒸し上げる。材料を吟味し、手間を惜しまない。

 室内の温度によって生地の膨らみ具合は微妙に異なる。まんじゅうを作り始めて30年。当初から店を手伝う次女の中野加代子さん(56)と2人で客の喜ぶ顔を思い浮かべ、失敗を重ねてきた。

 あんなしや、北海道産のユリ根を入れた冬季限定のものを合わせて全11種類。1個95円から140円で販売している。「懐かしい」「幻の味」-。そう言って、贈り物として毎年大切な人に届ける人もいるという。

 長年親しまれている理由を森上さんに尋ねると、こんな答えが返ってきた。「どこの山村にもあった味、風景を思い出すからでしょうか」。どこか懐かしいその味わいが、人を引きつけるのかもしれない。

(佐賀新聞社)

 

 

天山多久温泉タクア

 多久市北多久町に昨年7月、温泉やプールを備えた宿泊施設「天山多久温泉タクア」がオープンした。運営会社の本社がある長崎県をはじめ市外からの利用も多く、子ども連れを中心に新たな観光スポットになっている。

 天山を望むゴルフ場、天山カントリークラブの北コースに隣接する。客室(34室、最大6人)は和、洋、和洋室の3タイプで、温水プールは水深が浅い子ども向けも。レストランや宴会場、多目的ホールもある。

 食事は、九州産の黒毛和牛を使ったコース料理や魚と肉料理を選べる定食、会席など充実。日帰りでも楽しむことができ、温泉は大人750円、温泉とプールのセットは同1800円。宿泊は1泊朝食付きで8100円から。電話0952(75)7770。

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