気温が30度を超える中でピッチのラインを引く藤田斉さん=鳥栖市の駅前不動産スタジアム

 サッカー・J1サガン鳥栖の本拠地、佐賀県鳥栖市の駅前不動産スタジアム。90分間の試合を終えると、ピッチのあちこちにくぼみができる。選手が踏み込むなどしてできた激闘の跡だ。

 翌日、午前9時から午後4時まで3、4人がかりで砂を入れ、平らにしていく。試合中の大歓声とは対照的な静けさの中、グラウンドキーパーの鳥栖市職員・藤田斉(ひとし)さん(44)は作業に打ち込む。「風がない日はスタジアム内に熱がこもり、サウナ状態」と厳しさを表現する。

 週4回の機械での芝刈りをはじめ、散水、ゴールネット張り、ピッチのライン引きなど仕事は多岐にわたる。立っているだけで背中に大粒の汗が流れる蒸し暑さの中、「無理をしないことが一番」と1時間ごとの水分補給を忘れない。

 ゲリラ豪雨のように短期間で大雨が降った後、晴れ間が差したときは、特に頭が痛い。水はけが追い付かず、大量の雨水が芝にたまったまま気温が上がるため、「お湯のようになって芝が駄目になる」と藤田さん。ピッチの至るところに棒を刺して深さ15センチほどの穴を作り、下の土に雨水を通す必要があるため、試合がない日でも天気予報のチェックは欠かせない。

 23日、チームに所属する元スペイン代表のフェルナンド・トーレス選手の引退試合が開かれる。対戦相手は同じ元スペイン代表のイニエスタ選手らを擁するヴィッセル神戸。世界中から注目を集める一戦になる。

 メモリアルな試合が控えるが、藤田さんは「自分たちは裏方なので、特別なことをするわけではない。滞りなく試合が進むよう準備する」。選手たちの熱戦は、黙々と作業する仕事人が支えている。(佐賀新聞社報道部・田原一郎)

 

【メモ】駅前不動産スタジアムは1996年6月、JR鳥栖駅東に完成。観客約2万5千人を収容する3階建てスタンドを備え、フィールドは天然芝。6月末、イメージカラーのサガンブルーとサガンピンクに塗り替えられた。

 

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 日本列島は、各地で残暑が続いている。夏の九州・沖縄県紙交換企画「アツい現場」では猛暑の中、汗を拭いながら懸命に働く各県の人たちの思いを紹介する。全8回。

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