2018年度のカロリーベースの食料自給率が過去最低の37%となった。政府は自給率を25年度に45%に高める目標を掲げているが、達成は不可能に近い。しかし、食料自給率の向上を農政の重要目標とすることには疑問もある。もっと柔軟に食料供給の在り方を考えたい。

 18年度は天候不順で小麦や大豆の国内生産量が大きく減少したため、食料の重さを熱量に換算したカロリーベースの食料自給率は、前年度から1ポイント低下した。冷夏でコメの記録的な凶作が起きた1993年度と並ぶ最低水準だ。

 日本の食料自給率は65年度まで70%を超えていたが、長期的な低下を経て、最近は横ばい傾向で推移しており、上昇の気配は見えない。その原因と考えられるのは、担い手の減少など農業の構造的な問題に加え、食生活の大きな変化だ。コメ離れが進み、肉や乳製品などを多く食べるようになってそれらの輸入が増え、畜産用の飼料穀物の輸入も拡大した。

 食料自給率は海外からの食料輸入が増えると低下する。肉など畜産物は、国産であっても、餌の一部を輸入に頼っていれば、その部分はカロリーベースでは輸入品とみなされる。飼料穀物の輸入増加は自給率低下の一因となった。

 政府は主に食料安全保障の観点から、食料自給率の向上に取り組んできた。2010年の「食料・農業・農村基本計画」ではカロリーベースの食料自給率目標を「20年度までに50%」としていたが、15年改定の同計画では実現可能性を考慮して「25年度までに45%」に引き下げた。

 農林水産省は国産農産物の生産振興や消費拡大を通じて自給率の向上を図る方針だが、農業と食生活の現状を見ると、45%も現実的な目標とは思えない。自給率のこれ以上の低下を防ぐのが精いっぱいではないだろうか。食料自給率という指標の位置付けを考え直す必要がある。

 政府だけではなく、日本の食料自給率の低さを嘆き、自給率の向上を求める声は多い。その最大の論拠とされるのが、食料安保論である。自給率が低いと、海外の戦争や凶作などの非常事態で食料輸入が途絶えたとき、食料不足に見舞われる恐れがある、といわれる。

 しかし、現代日本でそのような食料不足が発生する可能性は小さい。世界に多様な食料輸入先を確保しておけば、仮にある国からの食料輸入が停止しても、別の国から食料を輸入できるからだ。食料自給率が低くても、不測の事態には十分に対応できると思われる。日本が自由貿易の擁護者として存在感を高めることこそが、食料安保に資するはずだ。

 1973年に米国が大豆の輸出を禁止したため、米国産大豆を輸入していた日本で大豆不足が起きたことがある。このときは豆腐などの価格が高騰したが、食料不足には程遠い。政府はその後、危機管理策として輸入先をブラジル、カナダなどにも広げた。大豆の自給率向上にとらわれていたら、この対応はできなかっただろう。

 農水省は来年3月に先行き10年間の農業政策の方向を示す新たな食料・農業・農村基本計画を策定する予定で、今後の自給率目標についても検討する。単なる数字いじりではなく、根本からの多様な議論を期待したい。

(共同通信・柳沼勇弥)

 

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