「勲八等白色桐葉(とうよう)章」。そう書かれた証書が実家の座敷に飾ってある。戦死した伯父に贈られたものだ。そして「昭和40年9月25日 内閣総理大臣 佐藤栄作」の文字。証書が届けられた時、子ども心に「勲八等? 戦死した人に等級をつけるのか…」と思ったものだ。その気持ちは今も変わらない◆遺骨の代わりなのか、仏壇には戦死したとされる土地の小さな石があるだけだ。タンスには仲間や近所の人たちが寄せ書きした日章旗、出征先からの手紙、はがきも残っている。文面からは親への気遣い、家族への思いが伝わってくる◆日中、太平洋両戦争の戦没者は310万人。うち113万人は未収骨だ。「英霊」と持ち上げられながら、いまだ遺骨が風雨にさらされ、海の底にある。さらに言えば、戦没者の4割近くは餓死だったとされる。なんとむごいことか◆作家の高村薫さんは「私たちが生きた20世紀」という文章の中で次のように書いている。〈世界のどこかで今まさに戦死者を悼んでいる家族もいずれ死に、真の悲しみの記憶はそこで途絶えるために、新しい戦争は常に起こり続ける〉◆昭和、平成、令和と年号は三つ目に入った。戦没者の遺品さえ目にする機会が少なくなっている。無残な戦争を生身で体験した人々の声、記憶をどう引き継いでいくのか。問われる時代にある。(丸)

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