来日した米国のエスパー国防長官が岩屋毅防衛相と会談し、中東・イラン沖ホルムズ海峡を航行する船舶の安全確保に向けて、米国が結成を呼び掛けている「有志連合」への参加を求めた。

 岩屋氏は「米国とイランとの関係などを総合的に判断する」と述べるにとどめたが、エスパー氏は会談前に「日本は参加を強く検討すべきだ」と言明しており、強い要請があったとみられる。

 米国とイランの対立で緊張が高まるホルムズ海峡は、日本が中東から輸入する原油のほとんどが通過するエネルギー供給の「生命線」であり、日本関係のタンカーなどの安全確保は確かに重要な課題だ。ただ、米主導の連合が「対イラン包囲網」となれば地域の緊張は逆に高まることにならないか。日本が長年築きあげてきたイランとの友好関係にも影響しよう。

 もし自衛隊を派遣するのならば、明確な法的根拠が必要になる。米国の圧力に焦ることなく、日本政府として慎重に対応を検討すべきだ。まず尽くすべきなのは、イランとの友好関係も生かした、地域の緊張緩和に向けた外交努力だろう。

 ホルムズ海峡付近では6月に日本の海運会社が運航するタンカーなどが攻撃される事件が発生。英国とイランが互いのタンカーを拿捕(だほ)するなど緊張が続いている。

 米国が有志連合を結成する考えを表明したのは7月上旬。その後、60カ国以上を招き、参加を呼び掛ける会合を数回開いている。米国が求めるのは、海上を監視するための艦船や航空機などの派遣や、中央指揮所への要員派遣と資金の拠出などとされる。

 各国の反応は慎重だ。これまでに参加を表明したのは英国だけ。欧州主導の護衛体制を検討していた前政権の方針をジョンソン新政権が転換した。しかし、ドイツは不参加を表明。ほかの各国も様子見の状態だ。

 背景には、緊張を招いたのが米国の側だという要因があろう。イランの核開発を制限するために苦心の末にまとめられた核合意から一方的に離脱し、制裁を復活させたのはトランプ大統領だ。

 日本政府も現時点では慎重な姿勢だ。6月に現職首相として41年ぶりにイランを訪問した安倍晋三首相は6日の記者会見でも「中東の緊張緩和に向けて、できる限りの役割を果たしていく」と述べた。その言葉を具体的な行動で示すべきだ。今後も両国に働き掛ける機会はいくらでもある。

 有志連合への自衛隊派遣を検討するとしても、現行法では難しい。想定される対応は、自衛隊法に基づく「海上警備行動」や、現在アフリカ東部ソマリア沖で実施している海賊対処法に基づく「海賊対処行動」。2016年3月に施行された安全保障関連法の「存立危機事態」や「重要影響事態」と認定した上での自衛隊の派遣や、「国際平和支援法」での他国軍の後方支援などがある。

 だが、どの法律でも可能な活動は限られる。米国とイランが戦闘状態に入ったわけでもない現在の情勢を、日本の存立が脅かされる「存立危機事態」と認定するのは無理があろう。もちろん、法律を拡大解釈したり、事実認定をねじ曲げたりするのは禁物だ。

 米国の求める具体的な活動と狙い、イランの反応と各国の対応―。これらの情報を分析し、情勢をしっかりと見極めたい。(共同通信・川上高志)

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