おたふくかぜの合併症で左耳の聴力を失った山口友花さん(中央)と片耳難聴への支援を求める学さん(右)、眞丘さん=伊万里市の自宅

 片方の耳が聞こえづらい子どもがいる伊万里市の両親が、人工内耳や補聴器の購入に公的支援を求める活動をしている。片耳難聴は学業やコミュニケーションに支障を来し、補装具を必要とする子どもは多いが、健康保険や助成制度の対象外で費用負担が重くのしかかる。両親はSNS(会員制交流サイト)で思いを共有する仲間を募っている。

 伊万里市松浦町の山口学さん(49)と眞丘(まおか)さん(38)の長女友花さん(13)は8歳のころ、おたふくかぜの合併症で左耳の聴力を失った。「ムンプス難聴」と呼ばれ、ほとんどが重い難聴になり、改善も困難だという。日本耳鼻咽喉科学会が2年前に発表した初の全国調査によると、2015、16年の2年間だけで300人以上が発症し、4~15歳が多かった。

 片耳難聴は音の方向の特定やさまざまな音の聞き分けが難しいため、大勢による会話は疲れる。また、聞こえない側から話し掛けられて気付かずにいると「無視している」と誤解されることもあり、コミュニケーションに消極的になる傾向があるという。

 友花さんの左耳の聴力は補聴器では補えないレベルに低下し、10歳の時に人工内耳を埋め込んだ。機器と手術・入院の費用約300万円は全て自己負担だった。人工内耳には健康保険が適用されるが、片方の耳が正常な場合は適用外となり、公的な助成制度もない。このため、片耳難聴の子どもが人工内耳をした例は国内になかったが、両親は「できる限りのことはしてあげたい」と決断。長崎大学病院の臨床試験で手術を受けることができた。

 友花さんは現在、授業中は先生に人工内耳用のワイヤレスマイクを着けてもらうなど、周囲の協力を得ながら学校生活を送っている。両親が今後心配なことの一つは、経済的な負担だ。1個約100万円する人工内耳の体外機は経年劣化による買い替えが必要で、年数万円の電池代もばかにならない。

 佐賀県聴覚障害者サポートセンターによると、県内では武雄市と鹿島市が人工内耳の体外機の買い替えを補助、佐賀市や唐津市など3市2町が電池購入に対して助成を行っている。また、県と20市町は軽度・中度難聴児(18歳以下)の補聴器購入に助成金を出している。しかし、これらは両耳の難聴者が対象で、片耳の場合は当てはまらない。

 両親は5月に「片耳難聴の会」をつくり、フェイスブックに日々の思いや議員への陳情などの活動報告をつづっている。最近、同じ悩みを持つ当事者や家族からメッセージが届くようになった。眞丘さんは「思いを共有する人の声を集めて社会や行政に届け、何らかの支援が受けられるようにしたい」と話す。

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