不信と対立が拡大しながら悪循環する状況をコントロールする覚悟があるのだろうか。

 日本政府が輸出管理で優遇措置を与える「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。これを受け、韓国の文在寅大統領は「盗っ人たけだけしい」「状況悪化の責任は日本政府にある」などと強い口調で反発した。

 元徴用工訴訟で韓国最高裁が昨年10月、日本企業に賠償支払いを命じる確定判決を出して以降、日韓政府間の議論はかみ合わないまま、時間だけを浪費してしまった。

 事態収拾のために日本が要請した政府間協議について、「司法の判断を尊重する」と具体的な対応を先送りしてきた韓国の姿勢が葛藤の根底にあるのは明らか。だが、韓国に対応を迫る手段として、日本が通商カードを持ち出すことに効果があるとも言い切れない。

 それは、半導体材料の対韓輸出手続きの厳格化を実施してからこの約1カ月の動きを見ても明白だ。韓国は国会の与野党対立を一時休戦して超党派での対応に乗り出し、韓国社会では日本製品の不買運動や日本旅行自粛、自治体や民間の交流事業を相次いで中止するなど、これまでにない対抗の動きが広がっている。

 このような険悪な流れを沈静化させる構えを両国政府が見せないまま決定された「ホワイト国」除外方針は、文字通り「火に油を注ぐ」結果を招きつつある。対話により摩擦を解きほぐす環境づくりが今こそ求められている。

 日本は通商分野での圧力を徹底させれば、韓国は遠からず譲歩してくると予測しているようだが、読み誤る危険性を抱えている。日本統治下の1919年に起きた抵抗運動「三・一運動」から今年で100年の節目を迎えている韓国では、民族意識が高まっている。

 特に、日本統治からの解放記念日「光復節」を8月15日に控えた時点での「ホワイト国」除外決定は、日本の「暴挙」(韓国メディア)と受け止められている。文大統領は談話で、「日本がわれわれの経済を攻撃」しているとの厳しい認識を示したことも、歴史的な意識が背景にあろう。

 韓国政府は対抗措置の一つとして、韓国も日本を「ホワイト国」から除外すると表明した。65年の国交正常化以来、両国企業人の努力によって積み上げられてきた相互依存の経済環境が損なわれるのは確実だ。

 日韓両政府が全面衝突している現状が長期化、さらに常態化することは、北東アジアの経済圏だけでなく、安全保障環境も不安定にする。

 米国は、新たな措置を取らず時間をかけて交渉する「据え置き協定」の仲裁案の受け入れを日韓両国に働きかけている。対立が深刻化すれば、北東アジアの安全保障を巡る日米韓3カ国の連携に支障が出かねないとの懸念からだ。

 米国は、現在の対決局面が日韓2国間の問題として収拾する一線を越えているとの危機感を抱いているのだろう。

 日韓両首脳は、米国だけでなく国際社会からどのような視線が注がれているのかを冷静に考え、真剣に対立を解きほぐす努力をすべきだ。米国の仲裁案も検討する価値がある。関係修復の可能性すら摘み取ってしまうような応酬は、日韓双方の国益を損なう打撃となって跳ね返ってくるのだ。(共同通信・磐村和哉)

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