毎日、郵便ポストに新聞が落ちる。そこには〈二つの音がある〉という。新聞配達に関するエッセーコンテストで以前、上田彩香さんという若い女性が寄せた一文にあった◆一つは〈夜更かしの音〉。一晩中、やってもやっても宿題が終わらない。家族が寝静まった家の中で〈今この世界で起きているのは自分だけなんじゃないか〉と孤独を感じる。そんな時、ポトンとポストの音が聞こえた◆もう一つは〈早起きの音〉。家族の誰より早く起きて、すがすがしい空気を吸う。〈今この世界で起きているのは自分だけなんじゃないか〉と優越感に浸る。そんな時も、ポトンとポストの音がした…◆さびしい時に「一人じゃないよ」と寄り添い、心弾む時は喜びを分かち合う。新聞を届けることの深い意味をあらためて思う。「配達の途中、夜明けの光で、もやがかかった杉木立が輝いて見える。初めて見た時は感動して感動して」。佐賀市の山あいにある販売店のご夫婦が教えてくれた。そんな小さな発見も大切な「燃料」にして、読者の元へ急ぐ◆けさ、みなさんのお宅ではどんな音がしただろう。創刊135周年を記念したタブロイド判はきっと、普段とは違って響いたはずである。新聞をもっと手近に感じてもらえたらいい。ポストから聞こえたのが、新しい世界の扉をたたく音であるといい。(桑)

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