総務省が先月発表した人口動態調査によると、日本人の人口は昨年1年間で過去最大の43万人余り減少した。佐賀県の半分を上回る規模が「消滅」したと考えると、加速する人口減少の深刻さを実感する。地域社会の未来図を描くうえで、住民に密着したメディアの役割は決して小さくはない。

 人口減を食い止めようと、各自治体は子育て支援に力を注いでいるが、地域によっては人口再生産が危ぶまれるほどコミュニティーの解体が進んでいる。家族の形もかつての「大家族制」から「核家族」、そして「単身世帯化」へと細分化した。県内はまだ多世代同居の比率が高いものの、総務省の調査によれば、65歳以上の半数は単身か夫婦だけの世帯という。

 こうした状況下で、効率化の名のもとに進んでいるのが、「公の縮小」である。県内でも「平成の大合併」で市町村数は半分以下になった。特に役所の本庁が置かれていない旧町村など周辺部では、身近な行政職員の削減、学校の統廃合や公共交通機関の廃止、商工会の合併などが進み、「不便になった」と不満がくすぶっている。

 さらに、地方議会は合併に伴う定数の削減と、近年はなり手不足に直面し、住民の不満を十分にくみ取れているとは言い難い。こうして周辺部の情報発信力は総じて低下する悪循環に陥っている。

 公的サービスが縮小する中で、高齢化する住民が直面する生活上の困難を家庭や地域だけで解決するのは難しい。「老後資金2千万円」問題の底流にある不安は、金銭で商品やサービスを購入する以外に頼れるものがない、という現実の裏返しでもあるだろう。

 高齢者が抱える問題は年金や介護ばかりではない。老親がひきこもり中高年の面倒をみる「8050問題」など、従来の社会保障・社会福祉の枠組みでは対応できない問題が顕在化している。さまざまな社会制度を動員しなければ解決が難しい複合的な問題である。

 地方をどう立て直していくか。地域社会が持続し暮らしやすい環境であり続けるには、どんな手だてがあるか。ほころびかけたコミュニティーを修復するには、住民同士がつながりを実感し、支え合うことで安心を担保するよりほかにない。相手を思いやり互いに信頼で結び付くのが第一歩だろう。

 そこに地方メディアの出番がないだろうか。スマホの普及によって、私たちを取り巻く情報環境は一変した。いつでも手軽に欲しい情報が手に入る半面、「情報爆発」ともいわれる情報量の著しい増加が息苦しさも生んでいる。

 博報堂生活総合研究所の「メディア定点観測」によると、スマホの普及率が8割を超えた2015年ごろから、スマホを一番の情報取得媒体にしながらも、既存メディアの良さを見直す動きが出ている。「オールドメディア」と評される新聞だが、情報の信頼性やオピニオン性に対する期待はスマホ全盛の時代でも依然高いという。

 きめ細かな情報網を持つ地方紙が宅配網というインフラを生かしながら、地域社会に生きる意味を問いかけ、住民同士を結び付ける。情報があふれる時代だからこそ、確かな「共有知」の存在がコミュニティーの基盤を強くする。ずっと地域とともに―創刊135周年の節目に、その思いを強くしている。(論説委員長 桑原 昇)

このエントリーをはてなブックマークに追加