チャップリンの名画「キッド」でけなげな5歳児を演じ、一躍子役スターになったジャッキー・クーガンは、のみ込みが早く撮影に手がかからなかった。「子どもはみんな、なんらかの形で天才を持っている。その天才を引き出すのがこつなのだ」―喜劇王はその演出術を語った◆そこは子どもである。実際には泣いてほしいシーンでどうしても泣き出さず、監督を弱らせたこともあった。そんな時、ジャッキーの父親が一声かけると、天才子役は見事に泣き出した。「泣かねぇと感化院へぶち込むぞ」(荻昌弘「七十二歳のライセンス」)◆わが子にもっと頑張ってほしいと願う時、どう言葉をかけるべきか。名古屋市で中学受験を巡り、小6の長男を刺殺した父親に先日、判決が言い渡された。難関私立中に進学させるため、勉強を教えるのが過熱し、次第にそれが暴力へと変わった。言うことを聞かせようとカッターや包丁で脅したのが悲劇を招いた◆親が教育熱心なあまり、子どもを厳しく追い詰める。近ごろは「教育虐待」と呼ぶのだそうだ。受験に限らず、子どもの行動をコントロールしたがる親は多い。「あなたのため」という一方的な強い思いが、「感化院へぶち込むぞ」と聞こえることもあるだろう◆夏休みは子どもと向き合ういい機会。「天才を引き出すこつ」に心を砕きたい。(桑)

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