熱演する佐賀東高演劇部の生徒たち。命について考える大切さを訴えた=鳥栖市民文化会館

 「やめたほうがいいのは、学校ですか、出産ですか」-。佐賀東高演劇部(江島穂乃香部長、19人)の舞台「君がはじめて泣いた日も、世界は普通の顔をした。」は、高校生が妊娠し、命と向き合う葛藤のドラマだ。「大人は『そういうこと言うのやめなさい』と言うけど、私たちはちゃんと考えていると伝えたい」と江島部長。「さが総文」演劇部門初日の27日、部員たちは「命は誰のもの?」と観客に問いかけた。

 文部科学省の調査によると、15~16年度に公立高校が把握した生徒の妊娠は全国で2098件。うち自主退学が642件で、学校が退学を勧めたのは32件だった。17年度だけで20歳未満の中絶は1万4128件にのぼり、学校が確認している以上に、高校生が妊娠や中絶と向き合っていることは想像に難くない。

 顧問の彌冨(いやどみ)公成教諭(44)は「子どもたちは、命の問題と真剣に向き合いたがっている。教育者側がはぐらかし、その思いに応えきれないでいる」と学校現場の現状を語る。

 とはいえ、昨年10月ごろに脚本を手渡した当初は、部員たちにも戸惑いがあった。脚本を囲み、語り合ううちに「妊娠があって私たちは今ここにいる」と、上演への決意が固まった。

 中には母が未婚のまま生まれた部員もいる。彼女の母は妊娠検査で子宮がんが見つかったが、わが子に会いたい一心で出産を決意したという。

 「私が生まれた瞬間、誰が私の命を望んでいただろうか」。この問いかけに、他の部員らは「私たちはいま、彼女を必要としている。子どもの命は親のものではなく、これから出会う誰かのため」との結論に至った。親子のエピソードは脚本にも生かされている。

 佐賀県助産師会の川崎圭子さん(59)は、文科省が18年に都道府県教育委員会などに出した通知に触れ、「『妊娠で学業を妨げないように』というたった一文を実現するのが、日本ではまだ難しい」と嘆き、「若者がこれだけのことを感じ取り、いろんな人生を受け止めていることに感動した」と涙をぬぐった。

 江島部長は「生まれてきたからここにいる。それは当たり前のことだから、命を語ることをあまり重く捉えないで。この舞台が、家族や友達と命について考えるきっかけになれば」と語る。

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