「バタバタバタ」。エンジン音を聞いただけで、それと分かる車だった。丸みを帯びた車体と愛嬌あいきょうのある顔つき。「カブトムシ」と呼ばれたドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の小型車「ビートル」だ◆1938年にナチス・ドイツが掲げた「国民車」構想に基づいて生産が始まった。原型を設計したのは故ポルシェ氏。初代型は2153万台と自動車の単一モデルとしては世界最多の生産台数を誇った。メーカー名としてではなく、車の名前として単に「ワーゲン」と呼ぶ人もいて、いかに同社を代表する車であったかが分かる◆先日、その生産が終了したと同社が発表、初代の誕生以来、約80年の歴史に幕を下ろした。最近は販売が苦戦していたとも伝えられ、生産終了のニュースに、どこか寂しく思った人も多かったのではないか◆日本のマイカーの元祖「スバル360」は見た目のデザインが「ビートル」を感じさせたこともあって、「カブトムシ」に対して「てんとう虫」のあだ名がついた。戦後、ドイツの復興の象徴でもあった名車は、日本の高度成長のシンボルにも影響を与えていた◆同じような車ばかりの時代にあって、運転する人のこだわりや人柄さえ乗せて走っていた「ビートル」。暑さ寒さの中での酷使に耐える独特のエンジン音を響かせて、時代を駆け抜けた。(丸)

このエントリーをはてなブックマークに追加