最高裁の意見陳述後、報道陣の質問に答える漁業者の平方さん=東京・永田町の衆院第1議員会館

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)の開門調査を巡る一連の訴訟で初めて最高裁弁論が開かれた26日、開門を求める藤津郡太良町大浦、漁業平方宣清さん(66)が上告人として第2小法廷に立った。「豊穣ほうじょうの海有明海を取り戻すには、開門するしかない」。司法権の最高機関で「法の番人」といわれる最高裁の裁判官に切なる思いを訴えかけた。

 天井は高く、間接照明などが照らす廷内。裁判官4人が奥の扉から入廷し、傍聴席も含めた全員が起立して一礼すると、菅野博之裁判長が「開廷します」と告げた。厳かな空気の中、漁業者側弁護団と共に上告人側の席に座った平方さんが最初に立ち上がった。平方さんは用意した紙に目を落とし、力強く語り始めた。

 1997年の堤防閉め切り前後から、平方さんが生計を立てる高級二枚貝タイラギをはじめ不漁が深刻化した有明海。「苦しくても開門の実現を信じて頑張っていける。私たちにとって希望の判決だった」。福岡高裁が国に開門を命じた訴訟の勝訴原告の1人として、2010年12月の判決確定当時を振り返った。

 だが期限内に開門は実施されず、国は開門を強制しないよう今回の請求異議訴訟を起こし、福岡高裁が認めた。「確定判決にははっきりと、国に開門を命じると書いてある。後から国が新たな主張をすれば、守らなくてよくなるということが信じられない」。国の姿勢と司法判断に疑問を呈した。

 平方さんが所属する県有明海漁協大浦支所の組合員はピーク時の1980年の404人から、今年3月末で211人と半数近くに減少。平方さんの長男も県外で漁業以外の仕事に就いた。「息子と一緒に海の恵みに感謝しながら大漁を喜び、孫には自然の素晴らしさを体感させてやりたい。その夢が実現するまで私は決して諦めません」

 閉廷後、開門訴訟原告で島原市有明町の漁業松本正明さん(67)は「有明海漁民全体の思いを代弁してくれた」。平方さんは「重い責任を感じた。漁業者の生活を守るためのしっかりとした判決を期待したい」と話した。

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