夏の甲子園出場を決め、ほっとした表情を浮かべた佐賀北高校の久保貴大監督=佐賀市のみどりの森県営球場

 日本中を沸かせた劇的な全国制覇から12年。歓喜の輪の中心にいた優勝投手は、今度は指導者として母校を甲子園に導いた。佐賀北高監督の久保貴大さん(30)。5年ぶりの優勝を決め、一回り年が離れた選手たちから5回胴上げされた。「恥ずかしいですね」。穏やかにほほ笑んだ。

 決勝の初回、先頭が三塁打で出塁すると、続く打者に迷わずスクイズのサインを出した。5試合で犠打の数は「27」。伝統の手堅い野球を踏襲した。日本一になったチームを率いた恩師の百崎敏克さん(63)は「選手をしっかり掌握し、それぞれの特徴を把握していた。『あそこで何で』という采配がこの大会、全くなかった」と話す。

 監督就任2年目での優勝。順風満帆に見えるが、昨年は初戦で敗退した。試合後、旋風を巻き起こした自身の現役時代のチームと今年のチームとを重ね合わせるような報道陣の質問には、淡々と対応した。ただ、母校の監督としての重圧を問われた時には、目を潤ませて数十秒間言葉を詰まらせた。「(勝たせることができて)良かったです」

 百崎さんは「寡黙でまじめ。器用ではない。表には出さないが、悩みはいっぱいあったと思う」と推し量る。「きついことも自分で乗り越えていくしかない。大会の中で生徒が成長し、監督も成長しているように見えた」とねぎらった。

 指導者として足を踏み入れる夢舞台。久保さんは「自分たちの野球ができるようにしたい」と平常心で挑むことを強調した。連日の激戦のさなか、長女が誕生して父になった。12年前に負けない、忘れられない夏になる。

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