早稲田佐賀校内に建つ大隈重信像

 

 佐賀出身の偉人・大隈重信を主人公とした連載小説が8月から佐賀新聞で始まるのをきっかけに、大隈にゆかりのある県内高校でその功績や人物像に迫る佐賀新聞社の出前授業が7月から始まった。対象となるのは早稲田佐賀、佐賀西、致遠館の3校。第1弾として、大隈が設立した早稲田大学の系属校である早稲田佐賀高(唐津市)で6日に行った授業の模様を詳報する。

 

生徒 大隈の生き方に刺激

 授業は、早稲田佐賀高で日本史を選択する2年生約70人が受講した。講師は、本紙で明治維新150周年企画の取材を担当した原田隆博記者と、NIE(新聞を教育に)活動推進を担当する多久島文樹デスク。同校の生徒にとって最も身近な大隈の功績である「東京専門学校(現・早稲田大学)の創立」などについて掘り下げ、その目的や教育に懸けた思いに触れた。

大隈重信の経歴を追いながら人物像を学んだ早稲田佐賀の生徒たち


 早稲田佐賀高は教育理念の一つに、早稲田大学の「教旨」でもある「学問の独立」を掲げている。原田記者はこれについて「大隈の、教育者としての思いが詰まっている」と強調。「外国の学問を取り入れて進歩する当時のあり方を見直し、日本人らしい学問を追究する『海外からの独立』や、『国に従属する人材は国を発展させない』との考えに基づく『国家からの独立』を目指した」と解説した。
 東京専門学校に関しては、政治家が政党をつくり物事を進める「政党政治」の担い手育成を目指していたことも指摘。「当時の高等教育は法律家の育成が中心で、政治を教える学校は少なくとても先駆的だった」と大隈の先進性を伝えた。

特集紙面を見る生徒たち


◆懐の深さ「見習いたい」

 授業では大隈の人となりにも触れ、功績だけからは見えない大隈の一面に生徒も関心を寄せていた。
 中でも原田記者は、民衆から慕われた理由の一つとして「幅広い思想を受け入れる性格」を挙げ、同じ佐賀藩出身で初代司法卿を務めた江藤新平を例に「考え方が全く違う人とも議論を交わしながら、自分の考えを深めていった」と説明。多久島デスクも大隈が学んだ藩校・弘道館の学びが素読・会読(読み合い)・討論からなることを説明した。
 思想的な懐の深さや弘道館の学びについては、生徒も「早稲田」の校風や自身の学校生活に置き換えてイメージしやすかったよう。クラスのホームルームで議論を進行する委員だという加藤史也さんは「さまざまな思想の人を受け入れた大隈を見習いたい。自分は意見が言えずに流されてしまうし、クラスで何か決める時も効率を優先するあまり、意見を言えない人に十分配慮できていないから」と打ち明け、「自分も互いが納得する解答に持っていくことができたら」と刺激を受けた様子だった。
 生徒会長の大越克磨さんは「インプットとアウトプットを使った勉強法が行われていたと知り、『議論好き』の早稲田の礎はこの時から生まれていたのだと感じた」と推察。「本校でも、大隈の志を継いだ議論の場がもっとできれば」と期待も語った。 

大隈重信の経歴を追いながら人物像を学んだ早稲田佐賀の生徒たち

◆「もっと知りたい」

 原田記者はその他、早稲田大学の顔として知られる大隈が他の私学とも関わりが深い事実を紹介。日本初の女子高等教育機関となった日本女子大の設立委員長も務めたことや、同志社大設立への働きかけ、慶應義塾大への援助などの実績を例に「大隈が現在ある私学の高等教育に関わった役割はすごく大きい」と評価した。
 多久島デスクは、特に朱子学一辺倒だった弘道館の教育内容に、蘭学を重視した大隈が異を唱えたことで騒動となり退学処分を受けたエピソードなどを披露。「世の中が変わる時は、新しい考え方が入ってくる。小さい頃から学んできたものとは違う、新しい学問に触れた時にどう対処するか」と生徒たちに問いかけ「大隈は『自分たちの状況を考えたらこう進めるべきだ』と自らしっかり考え活躍していった」と、蘭学や英語を熱心に学んだことを説明した。
 木下遥さんは「早稲田の基礎を築いたことや、習ったことがない時代を知ることができてよかった」。楠田うみさんは「大隈重信は早稲田の創立者ということしか知らなかった。政治や蘭学の話を通してもっと知りたいと思った」と感想を語った。


■佐賀新聞出前授業「大隈侯に学ぶ」
 歴史小説「威風堂々」の連載開始に合わせ、大隈の志を現代の若者に伝えるためゆかりの県内高校で開く佐賀新聞社の出前授業。第1弾は7月6日に早稲田佐賀高(唐津市)で開催。第2弾は藩校・弘道館の流れをくむ佐賀西高(佐賀市)で同24日に開き、第3弾は大隈が運営に当たった佐賀藩の英学校と同名の致遠館高(同)で8月に開く。


■歴史小説「威風堂々」8月2日スタート
 大隈重信を主人公に、8月2日から佐賀新聞本紙で連載を開始する。連載期間は来夏まで約1年間。幕末の佐賀藩に生まれ、明治期に藩閥政治から立憲・政党政治への道筋を切り開いた大隈の思想と生涯を描く。
 執筆は歴史小説家の伊東潤さん(横浜市出身)、挿画は佐賀市の日本画家大串亮平さん。題字は佐賀県高校文化連盟書道専門部に所属する高校生が週替わりで担当する。

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