国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防。排水門で仕切られた諫早湾(手前)と調整池(奥)=2017年4月、長崎県諫早市

 諫早湾干拓事業の開門を巡る一連の訴訟では、開門を命じた2010年12月の確定判決の効力が最高裁で大きな焦点になっている。国が開門を強制しないよう求めた訴訟で福岡高裁は昨年7月、確定判決を事実上無効化する判決を言い渡した。国は開門せずに漁業振興の基金創設による問題解決を目指しているのに対し、確定判決の勝訴原告の漁業者は開門することも含めた和解協議を訴えている。

 国は開門義務を果たさず、制裁金となる間接強制金が課されてきた。その支払いを免れるための「請求異議」の訴えを2014年1月に提起したものの、同年12月の一審佐賀地裁判決は請求を棄却した。国側は控訴した後、17年4月には別の訴訟で開門差し止めを認める一審長崎地裁判決を受け入れて開門しない方針を農相が表明した。

 請求異議訴訟の二審の福岡高裁は昨年3月、結審した後に設けた和解協議で、国の主張に沿って開門しない前提での100億円の基金案による和解を勧告した。開門派の漁業者側は拒否し、協議は決裂した。

 高裁は昨年7月の判決で、期限が過ぎたことによる漁業権の消滅によって漁業者の開門請求権も消滅したとの判断を示し、一審判決を取り消して国の請求を認めた。開門命令の確定判決の強制力を失わせることで事実上無効化し、約4年間で12億円余りを支払ってきた国の制裁金も以後の停止を命じた。漁業者側は確定判決の後ろ盾が失われる形となり、開門しない司法の流れが強まった。これまで払われた制裁金は、漁業者側弁護団が管理している。

 漁業者側は判決を不服として上告した。国側は二審で勝訴した後も、これまで通り基金による和解の方針を維持している。漁業者側も和解による問題解決を目指しているが、開門の可否の条件を付けずに開門差し止めを訴える干拓地の営農者らも交えて協議するよう求めている。

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