参院選の選挙戦のマイク納めで、犬塚直史氏(左)への支持を訴えた大串博志衆院議員(中央)と原口一博衆院議員=佐賀市神野東の事務所

 「正直、時間がね。多久市長に声を掛けたことで遅れた。あの時間がもったいなかった」。参院選の選挙戦最終日の20日夜。国民民主党の元職犬塚直史(ただし)氏(64)のマイク納めを佐賀市の事務所で見守り、家路についた支持者からそんな声が漏れた。犬塚氏は翌日、自民党の現職に大差で敗れた。

 国民民主県連が多久市長の横尾俊彦氏の擁立に動いたのには、わけがあった。国民民主は民進党時代の2016年の参院選と、事実上応援した18年の神埼市長選で、県外出身の候補で負けていた。「だから今回は絶対、地元だと思っていた」。県連代表の原口一博衆院議員はこう振り返る。昨年11月になって横尾氏に出馬を要請する方針を表明したが、色よい返事はなかった。結果的に県外出身の犬塚氏を担ぎ、出馬表明は公示まで1カ月を切ってからだった。

 擁立の遅れは、選対本部長としてフル回転した原口氏と、選対相談役の大串博志衆院議員(無所属)が得意とする「草の根」での活動の時間不足を意味していた。保守層への食い込みを図ろうにも、「原口さんだったら応援するんだけど」「大串さんなら入れるけど、今回は難しいね…」。両氏の事務所関係者は何度となく、こうした言葉を有権者から聞かされた。

 犬塚氏の得票は11万5843票。これは前回参院選で旧民進党の候補者が獲得した11万9908票と大きく変わらない。国民民主県連の関係者は「これが『反自民』という意味での基礎票だろう」と分析する。

 今回を含めて25回を数える参院選の中で、自民が敗れたのは2007年だけ。国民民主関係者は「このときは4年間ほどかけての勝利だった。犬塚後援会が原口、大串後援会のようになるには、やはり1カ月では足りない」とこぼした。

 選挙戦のさなかの、犬塚氏の事務所の一角。県内5野党・会派による初の参院選統一候補ということもあり、仲介役を務めた市民連合さががスペースを借りて連日のように会合を開き、犬塚氏の妻が参加するミニ集会を県内各地で企画していった。市民連合の岩井三樹代表代行(77)は「衆院選2区に当たる地域で開いたときは大串さんの妻にも参加してもらった。初めてだけにお互い戸惑いもあったけれど、徐々に信頼関係が築けた」と、安倍政権への対抗軸の深化を喜ぶ。

 共産党県委員会の今田真人委員長も「原口氏や大串氏とは信頼関係が深まったと思っている」と口をそろえる。次期衆院選での共闘に向けて「あらかじめ両氏の支持を打ち出すべきかもしれない」と踏み込む。

 ただ、こうした共闘の在り方にジレンマを抱える野党関係者もいる。「われわれは自民の支持層を切り崩す戦術を取っている。それだけに、共産党と近くなることで保守層が離れる可能性も考えないといけない」

 次期衆院選で野党共闘をさらに強化し、政権選択を迫れる状況をつくれるのか。その形は見えない。

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