あの日、世紀の瞬間を見逃すまいとテレビ画面をじっと見つめていた。宇宙船との「ピー」という交信音と、鮮明ではない映像が妙にリアルだった。月を見上げて「あそこに人がいるのか」と子どもながらに感慨に浸ったものだ◆1969年7月21日午前11時56分20秒(日本時間)。米国のアポロ11号が月面着陸に成功、アームストロング船長が人類で初めて月に立った。「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類には大きな飛躍だ」。船長の言葉と月到達の衝撃は、近づく21世紀への夢をかき立てた◆翌1970年。大阪万博で「月の石」が展示された。5月にトランプ米大統領を招いた宮中晩さん会で天皇陛下も語っていた。「貴国との最初の思い出は大阪万博であり、当時10歳でしたが、月の石を間近に見たこと(中略)を今でも鮮明に覚えています」◆陛下と同じ当時小学生だった世代には忘れられない出来事。「月の石」が教えてくれたのは科学の進歩と同時に、宇宙の雄大さと争い事の無意味さであり、平和への素朴な願いだった◆あれから50年。米国は再び月への目標を掲げているが、当時の高揚感はない。火星旅行もなければ、争い事もなくならない。子どもの頃に思い描いた世界とはずいぶん違う。きょうは参院選の投票日。大人になった今、どんな未来を一票に託そうか。(丸)

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