子どものいじめ自殺を巡り、各地で学校や教育委員会が批判にさらされている。岐阜市で今月初め、市立中3年の男子生徒がいじめをうかがわせるメモを残し、マンションから転落死した。約1カ月前、生徒へのいじめを告発するメモを同級生から渡された担任は事態を軽くみて校長ら管理職には伝えず、組織的な対応は取られなかった。

 兵庫県尼崎市で2017年12月に自殺した市立中2年の女子生徒は前月の学校アンケートで、いじめ被害を示唆していたのに、担任は放置。母親は先月、市に賠償を求め提訴した。一方で、教育委員会が設置した第三者委員会の調査に納得できず、再調査を申し立てる遺族も後を絶たない。

 いじめと自殺の因果関係に否定的な当初の調査結果は次々に再調査で覆されている。13年施行のいじめ防止対策推進法が規定する早期発見と防止、事実関係の調査と被害者側への情報提供などの仕組みがまともに機能していない例には事欠かない。規定の実効性が疑問視され、超党派の国会議員勉強会は昨年、改正に向け素案をまとめた。

 いじめの疑いを把握しながら放置した教員らを懲戒処分の対象とする新設条文などを盛り込むとしたが、今年4月に示された試案では現場の負担増を理由に削られ、遺族らが猛反発。議論はストップしている。子どもの命を守るために何ができるか。法改正を含め議論を加速させるべきだ。

 岐阜の事態を重くみた文部科学省は担当者を市教委に派遣し、聞き取り調査をした。同級生から担任へのメモには男子生徒が給食で嫌いな食べ物を押しつけられたり、物を隠されたり、いじめを受けていると書かれていた。担任は相手の男子2人を指導。問題は解決したと思い、情報は管理職と共有されなかった。

 その後、男子生徒が亡くなると、生徒たちからは「2万円を要求されていた」「びんたをされていた」といった情報が寄せられた。学校は警察からの照会で初めてメモの存在を知ったが、既に廃棄されていたという。

 男子生徒は最近の学校アンケートで「いじめはない」と答えた。それもあり、いじめかどうかを見極めるのは難しかったかもしれない。ただメモを受け取った時点で生徒たちから聞き取りをしていればと悔やまれる。

 大津市で11年にあった中2男子の自殺を巡り、学校側がいじめに気付きながら放置し、自殺の原因と当初認めようとしなかったことに批判が噴出。これを教訓に制定されたいじめ防止法は、心身への重大な被害や長期の欠席といった「重大事態」で学校や教委に第三者委により事実関係を調査し、被害者側に情報提供するよう義務付けた。

 しかし、いじめの放置はなくならない。山梨県では、市立中の女子が17年に自殺を図り、家族がいじめ被害を訴えたのに、市教委は重大事態と認定しなかった。家族の申し立てを受け認定に至ったが、今度は第三者委の人選に家族が反発。今月に入り、第三者委は市教委の対応の不備で被害者側の協力を得られないとして解散を表明した。

 重大事態を巡る対立は絶えず、学校・教委側の保身や怠慢が見え隠れすることもある。かつての教訓が生かされず、子どもの命を守る仕組みのほころびがあらわになっている。危機感を持ち対策に取り組む必要がある。(共同通信・堤秀司)

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