日本語教室で日本語を学ぶ町内外の技能実習生ら。日本語教育の現場はボランティア頼みになっているのが現状だ=杵島郡白石町(写真と本文は関係ありません)

 6月中旬、佐賀新聞社に1本の電話がかかってきた。相手は県内で縫製会社を営む80代の男性。劣悪な労働環境に置かれ、相次いで県内で保護される外国人技能実習生の実態を報じた記事を見たという。「保護された実習生を雇いたい」。男性はこう切り出した。

 この会社では、従業員15人のうち30~40代のベトナム人女性5人が実習生として働く。このうち1人は11月に実習を終えるため、人手が足りなくなるという。

 5人とも日本語を十分に話せない。仕事を教えるのも苦労するが、「うちのような小さな会社には日本人は来てくれない」と嘆く。今春、数年ぶりに雇った日本人は60歳を超えていた。

 県内の外国人労働者は昨年10月で5258人。この5年で倍増し、実習生が約半数を占める。深刻化する人手不足を背景に事業所などで受け入れが急速に進む中、外国人を「安価な労働力」として都合良く酷使してきた負の面が表面化している。違法な長時間労働や賃金の未払いなどで国認可の監督機関に保護され、県内の支援者の元に身を寄せた実習生は15人に上る。

 ▼ボランティア頼み

 技能実習制度には介護分野を除き、受け入れに必要な語学力の基準はない。入国後に日本語を学ぶ1カ月程度の講習が義務付けられているだけだ。保護された実習生の中には講習さえ受けさせてもらえず、日本語を全く話せない人もいた。

 日本語教育の体制づくりは遅れている。県内に17カ所ある日本語教室の運営はボランティア頼み。多久市でインドネシアなどからの実習生9人を無償で指導する古川澄子さん(67)は、やりがいの一方で不安も覚える。「彼らが日本で心豊かに暮らすには一定水準の語学力が必要。ボランティアがだめとは言わないが、責任が重すぎる」。

 県国際交流協会によると、昨年の日本語教室の受講者は全17カ所で約130人程度。仕事が休みの日曜日に開講するところもあるが「仕事で疲れきった生徒もいる。就業時間内に社内で教える環境をつくるべきでは」と古川さん。実習生が日本人と接触するのを警戒する事業所も多いという。

 ▼隣人に寄り添う

 外国人労働者の家族を巡る環境も十分ではない。県内の公立学校で日本語指導を必要とする児童生徒は少なくとも12市町39校の71人。これに対し、県が派遣する常勤の指導教員は4人だけだ。

 外国人労働者に関する参院選の公約では、多くの政党が権利擁護や生活支援など共生社会の実現に向けた政策を掲げる。ただ年金問題などの争点を前にかすんでしまっている。

 「働き手としてだけでなく、尊厳や夢、希望を持った隣人として、彼らに寄り添ってもらえたら」。法や制度先行で受け皿不足が指摘される中、古川さんはそんな思いを強くしている。

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