日本で最初に花火を見たのは伊達政宗だったという。駿府すんぷ城で見た徳川家康よりも四半世紀早い天正17(1589)年、唐人の献上花火を楽しんだ。『新日本大歳時記』(講談社)が紹介している◆当時は「打ち上げ」という概念はなく、筒に詰めた火薬から火花が噴き出す「手筒」だった。徳川吉宗の時代に両国隅田川の川開きの花火が始まり、当初は手筒、18世紀半ばからは打ち上げ花火が夜空を飾った◆中国や欧米での「祝砲」の意味合いというより、「美しさとはかなさ」を象徴する日本の花火。きょう14日、唐津市で九州花火大会が開かれる。空模様が気になるが、2尺玉は直径500メートルに達するというから楽しみだ。あす15日は「海の日」。本格的な夏の到来である◆この季節を歌った井上陽水の名曲に「夏まつり」がある。自転車の後ろに浴衣姿の妹を乗せ、祭り会場へ向かう。友達もいて笑い声が聞こえてくる。幼い心を躍らせた遠い夏。陽水は〈十年はひと昔 おまつりはふた昔〉と歌い、〈思わずよみがえる夏の日〉に思いをはせる◆祭りの情景を描いただけなのに、その劇的な熱唱は、彼が生まれ育った炭鉱の町筑豊の盛衰が重なり、聞く人の郷愁を誘う。花火大会、夜店、海水浴、スイカ割り…。勉強も大事だが、友達や家族との楽しい思い出は、きっと人生の糧になる。(丸)

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