東京一極集中を是正して地方に活力をもたらそうと、安倍政権が2014年に打ち出したのが「地方創生」だ。看板政策のキーワードとしては定着している。しかし、その成果は限定的で、縮みゆく地方に歯止めが利いていない。

 参院選の公約では、地方が置かれた厳しい立場を踏まえ、各党とも地域活性化策を盛り込んでいる。

 自民党は、地方の若者の起業・就職支援などに加えて、農林水産業や観光の振興も地方創生枠とした。公明党は年間4千万人を見込む外国人観光客を「地方創生の切り札に」と訴えた。与党はおおむね総花的である。

 野党も濃淡はあってもそれぞれの切り口で地方のありように言及しているが、地方自治体への財政支援などでは既視感もある。憲法、安保、年金など対与党を意識した他の争点にかすみがちだ。

 政府は、本年度までの5カ年計画で、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)の転出と転入の人数を20年に均衡させる目標を設定。省庁の移転や地方大学の活性化を掲げた。産業振興や企業誘致を交付金で支援し、東京23区から本社機能を移す企業の税を優遇している。

 だが、一極集中はむしろ加速している。昨年の東京圏への転入者は転出者を約14万人も上回った。若者と女性を中心に前年より約1万4千人増えている。省庁の移転が、21年度までに京都に引っ越す文化庁しか決まっていないのも示しがつかない。

 手詰まり感も漂う中、第2期となる20~24年度の方向性を示す「まち・ひと・しごと創生基本方針」が6月に決まった。引き続き東京一極集中の是正に重点を置き、対策を強化するとしたが、さすがに達成が絶望視される20年の転出入均衡は旗を降ろした。

 新機軸は「関係人口」だ。兼業や副業を望む都市の住民と、人手不足に悩む地方の企業を結び付け、将来的に移住の増大を図るという。だが、対象者がどれほどいるか、景気に左右される仕事と希望者のマッチングがうまくいくかといった不透明な要素は多い。

 新たな政策メニューを繰り出すなら、奏功しなかった第1期の徹底検証が不可欠である。危惧するのは、それをおろそかにして、予算のために地方創生の看板を掲げ続けるのが目的化してはいないかということだ。基本方針の具体施策は来年度予算編成に合わせて決まる。ばらまきの隠れみのにしてはならない。

 地元に住民をつなぎ留め、移住者を呼び込むためには、独自の新たな産業などで「稼ぎ」を生み出して都市部との所得格差を埋め、税収アップで行政サービスを充実させる必要がある。

 国の本来の役割は、そうした各地の自立を助ける地方分権や税源移譲などの条件整備だ。地域に仕事をつくるには経済界も巻き込んだ「政官財」の連携が必要で、その調整も求められよう。

 選挙戦はもう終盤だ。地域の維持に腐心する選挙区ほど、一極集中の打破と地域活性化に対する政党や候補者の思いが声高になっていくだろう。その本気度と実現の道筋をしっかり見極めたい。

 そして、自分たちの街のあるべき未来像を共有できる人材を選択してもらいたい。生活の行く末にもつながるその責任は重い。有権者もまた、選挙で問われている。(共同通信・佐久間護)

このエントリーをはてなブックマークに追加