地震から3年が経過し、復旧工事が進む熊本城の大天守=熊本市

 2016年4月の熊本地震で深手を負った国の特別史跡「熊本城」の修復が進んでいる。ただ、完全復旧までには20年を要する大工事で、関係者はその時々のありのままの姿を見てもらうことを基本方針にしている。外観修復にめどが立った大天守まで近づける特別公開を10月に始め、来春には新たな見学通路も完成する。地域の誇りを取り戻そうと奮闘している熊本にエールを送り続けたい。

 「完全に直るまで何も見せないわけにはいかない。復旧の様子を見てもらうことが大事」。熊本城総合事務所の濵田清美副所長は、来るたびに違った様子を見てもらうことで、復興のイメージが膨らむと強調する。

 国の特別史跡である熊本城の管理は、国の委託でずっと熊本市が担ってきた。地震後の復旧工事に関しても、市が文化庁と協議を重ねながら実働役を果たしている。

 2度の激震で威風堂々とした熊本城の石垣が崩れていく映像を覚えている人も多いことだろう。城内には櫓(やぐら)や門など13棟の重要文化財があるが、そのほとんどが打撃を受け、工事は難航を極めている。

 特別史跡の工事は原状回復が基本。文化財の価値を損なわないように配慮しなければならない。崩れた石垣は1個ずつ番号を付けていったん保管場所へ。それをジグソーパズルのように組み合わせるなど丹念な作業が求められる。一方で、大地震への備えを強化するため最新鋭の建築技術も駆使している。倒壊を免れた大天守の内部修復では、柱と梁(はり)に囲まれた部分に、剛性を高め、揺れを吸収する「クロスダンパー」を据えるなど工夫している。

 戦国武将の加藤清正が築き、1607年に完成した熊本城は、全国屈指の名城で、熊本県民にとってまさに郷土の誇りであろう。地震から3年以上たった今も傷痕は大きいが、熊本城が復興の象徴として往時の輝きを取り戻しつつあるのは、何よりうれしいはずだ。

 秋の特別公開は10月5日から。最初の1週間は平日も見学でき、その後は日曜中心の公開となる。来春には修復工事の様子を俯瞰(ふかん)的に見られる橋状の見学通路も完成する。

 少し話がそれるが、熊本城の復旧工事の取材を続けている熊本日日新聞社の記者が、来年度の小学6年の道徳教科書で紹介される。地方紙の役割は地域の課題に向き合い、県民と共に歩むことにあるが、地域を思い、日々変わりゆく姿を克明に伝える姿が認められたということだろう。

 濵田副所長は、佐賀などからの応援に感謝し、「今の姿を見てほしい。それが熊本の元気につながる」と呼びかける。温かいまなざしを送り続けることが、確かな復興支援になる。(杉原孝幸)

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