中国に「飲水思源(いんすいしげん)」という古いことわざがある。水を飲む時、その水源のことを忘れてはならない、という教え。今ごくごくとおいしい水が飲めるのは、一体誰のおかげか―水不足にあえぐ今夏は余計、この成句が身にしみる◆米国市場から締め出しを食った中国通信機器大手ファーウェイの最新スマホは、部品の半分ほどが日本や韓国、それに米国の企業製で占めるそうだ。情報社会の「水源」をたどれば、日本の技術が「安価で高性能」の一端を支えている。深刻化する米中対立で泣かされているのは誰か―思えば気分が沈む◆日本政府が韓国に対し、半導体素材の輸出規制強化に踏み切った。戦時中、朝鮮半島から動員された元徴用工の賠償問題を巡り、韓国政府への事実上の対抗措置という。両国で「解決済み」だった問題をこじらせた韓国側の姿勢には首をかしげざるを得ないが、貿易を政治の道具にするのは「トランプ流」と大差ない◆半導体を使ったスマホやテレビの部品は日韓の企業間で相互に使われており、「違うのはメーカーのラベルだけ」といわれるほど。無益な報復合戦で泣かされるのは誰か◆「一衣帯水」とされてきた日韓関係。一本の帯のような、ひとまたぎで越えられる川。しかし今、横たわる寒々とした流れは岸辺さえ見えない。歴史という悩ましい「水源」である。(桑)

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