玄海町を好きになってほしいとの思いで、訪れる人をもてなしている町民の言葉が強く残った。「来てくれた人に原発の話はしきらんね」。返事に困った。

 唐津支社で玄海町を担当するようになったのは、九州電力玄海原発3号機が再稼働する直前だった。「原発取材が仕事だ」と感じた。再稼働や廃炉、町の選挙という節目で、原発の関連記事を書き続けてきた。

 今回の「移動編集局」の取材は、これまでとは全く違うものだった。町の魅力を取り上げるために走り回った。取材に応じてくれた人は、みんな古里への思いにあふれていた。自分が、原発立地自治体としての側面ばかりを見てきたことに気付かされる日々だった。

 原発を話題にしづらい雰囲気がある。冒頭の町民も、観光客に胸を張って原発があるとは言えない複雑な思いを抱えていた。一方で取材が一段落すると、自ら向き合い方を淡々と語り出す人もいた。

 棚田がある、おいしい産物がある、それらを育む温かい人がいる。そして原発もある。今回の取材を通して、町の輪郭が見えてきた気がした。(藤本拓希)

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