日本政府が半導体製造などに必要な材料について韓国への輸出規制の強化に乗り出すことを決めた。安全保障に関係する電子部品などの対韓輸出でも、規制が緩和される「ホワイト国」から韓国を除外する準備を進めている。

 元徴用工訴訟を巡る対応で、これまで事態を放置してきた韓国に対する事実上の対抗措置だが、歴史問題に通商問題を絡める手法は日韓両国にとって“劇薬”になりかねない。破局を避け、着地点を見いだす外交努力を模索すべきだ。

 韓国の主力産業である半導体製造は、日本の部品や素材への依存度が突出して高い。輸出規制で韓国が受ける打撃は大きく、韓国では少なくない企業が操業中断を迫られるとの予測も出ている。だが、韓国から半導体製品を輸入している日本にも、韓国からの製品輸入価格の上昇や対韓輸出減少など負のブーメラン現象が予想される。

 それだけではなく、半導体大手のサムスン電子などが減産に追い込まれれば、世界市場に与える影響も少なくない。米中の貿易紛争をにらみながら、「自由貿易の尊重」をうたう日本に対する国際社会の視線も厳しくならざるを得ないだろう。

 日韓には元徴用工訴訟以外にも、従軍慰安婦問題に関する2015年の政府間合意への対応や、昨年末に起きた自衛隊機への火器管制レーダー照射問題、東日本大震災後に韓国が実施している福島など8県産の水産物禁輸措置など懸案は山積している。

 今回の輸出規制決定は、非難の応酬を続けるレベルから、実際の措置による圧力強化という局面に踏み出すことを意味する。韓国が世界貿易機関(WTO)への提訴など対抗措置を講じれば他の懸案の収拾も難しくなり、日韓関係は長期間、修復不可能な状態に陥る。

 報復の連鎖という最悪の事態を回避するためには、首脳レベルの意思疎通が不可欠だ。しかし、先に大阪市で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で安倍晋三首相と文在寅(ムンジェイン)大統領は出迎えで顔を合わせただけで、沈静化を図る機会を生かせなかった。

 第一義的な問題は、元徴用工訴訟で生じた関係悪化の深刻性を認識しているとは思えない韓国政府の姿勢にある。元徴用工訴訟では「司法判断に介入しない」として事態収拾に乗り出さず、原告団による日本企業の資産差し押さえと売却手続き申請という瀬戸際の段階に至ってしまった。

 元徴用工問題は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」であり、最高裁判決は「国際法違反の状態を生んでいる」とする日本の主張に、韓国は正面から向き合ってこなかった。韓国は、請求権協定に基づく2国間協議に早急に臨むべきだ。

 文大統領はG20の開催直前、共同通信など世界の主要通信社と行った書面インタビューで、既に日本が拒否した日韓の企業による賠償金相当額の出資案について「現実的な解決策」と表明、危機意識の希薄さをのぞかせた。残念と言わざるを得ない。

 相互依存の枠組みを揺るがすような輸出規制の波紋は、日韓の経済関係だけでなく、世界経済にも確実に悪影響を与える。両国首脳は、その責任を負うだけの覚悟があるのか自問し、負の連鎖を断ち切る決断を早急に下すべきだ。(共同通信・磐村和哉)

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