バスに乗っても「運賃」という漢字や行き先を告げる文字が読めず乗るのが恐い―。岡山県の中学生小西珠生(たまき)さんは、夜間中学に通う人たちの勉強を手伝うボランティアをしていた時、男性からそんな話を聞いた。病気で学校に行けず、読み書きができないので恥ずかしい思いをしてきたという◆さらに自分の祖母より年上の人から「習ったことを忘れたくないから宿題を出してください」と頼まれ、宿題が嫌だと思ってきた自分を恥じる。いかに自分が恵まれているか痛感したのだった◆夜間中学はいろいろな事情で勉強ができなかった人に学ぶ機会を提供する。小西さんは10代から80代まで5カ国の人が通っていることに驚いたという。そこで「学ぶことの意味を教えていただいた」とつづり、昨年の全国中学生人権作文コンテストで最優秀賞に選ばれた◆戦後の混乱の中で義務教育を修了できなかった人がいる。最近は親の虐待で学校に行けなかった人や外国籍の人も増えている。日本で生活する人の多様化も背景にあろう。国立国語研究所が約70年ぶりに「識字」(読み書き)の実態調査をするそうだ◆「教育が受けられず劣悪な状況に追いやられている人がいる。そのことを忘れてはならない」と小西さん。「学ぶことは生きること」。作文のタイトルに込められた思いをかみしめたい。(丸)

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