希望すれば土砂災害警戒区域内の住民に鳥栖市が貸し出す防災ラジオ

 佐賀県で初めて大雨特別警報が発令され、佐賀市と伊万里市で2人の犠牲者を出した昨年7月の西日本豪雨。県内9市町23万人の避難指示に対し、避難所に足を運んだ住民は3137人にとどまった。災害のリスク度合いを5段階で示す気象庁の「大雨・洪水警戒レベル」導入で、避難に関する実務を担う自治体は、住民に具体的な行動を促す取り組みが重要になる。本格的な出水期に入った中、鳥栖市と杵島郡大町町の現場の模索を追った。

 鳥栖市は、コンセントさえ差し込んでおけば無線で避難情報を強制的に流す防災ラジオを約400世帯に貸し出す事業の補正予算案を6月定例議会に提案、可決された。

 市の防災担当者は1年前の住民避難について苦い表情で振り返る。「大雨特別警報の発令を知らない山間部の住民がいた。土砂災害警戒区域内での情報弱者の存在に頭を抱えた」

 大雨特別警報は、今回導入された警戒レベルでは最も高いランクに該当し、住民が取るべき行動は「命を守る最善の行動を」とされている。鳥栖市では西日本豪雨で人的被害はなかったが、この先、住民が行政情報を取りこぼして避難が遅れることで土砂災害などに巻き込まれる事態を市は危ぐする。

 「屋外の行政防災無線は大雨の際、家の中では聞こえにくい。さらに山間部の住民は、スマホも携帯も持たない高齢者が少なくない。これでは緊急性を伴う情報を伝えられない」と市の防災担当者。ラジオを希望する土砂災害警戒区域内の世帯に配る予定だ。

 杵島郡大町町は今年3月から多久市と近接する聖岳に、町独自に雨量計を設置し運用を始めた。

 設置の契機は、住民に避難情報を出す際に「気象庁や県などの情報に加え、町に降った実際の雨量など独自のデータを加味しないと、実情に合わない(避難)勧告や指示を出してしまうのでは」(町総務課)との疑問だった。雨量計新設は町長の決断だった。

 多久市で大雨を確認しながら、町役場に既設している雨量計はゼロに近いなど、ここ数年、局地的な降雨量の差が際立っている。ピンポイントのデータの重要性が高まっているだけに、町独自のデータを示すことで「住民の決断を促す有力な材料となるはず」(総務課)と期待を込める。

 防災担当の職員は緊張感をにじませ強調する。「(的確な避難情報の発信は)長年のデータ蓄積と経験が必要。だが、災害は時と場所を選ばない。独自データを基にした避難指示の判断が、近いうちにある可能性も否定できない」

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