「これは何ですか」「ハモでしょう」「ハム?」「いいえ、ハモ」「ああ、魚ヘンにユタカ…鱧(はも)か」―。小津安二郎監督の映画「秋刀魚(さんま)の味」。ハモが出てくるシーンはあるが、サンマは登場しない。映画の題名には、一人娘を嫁がせる父親の心情のほろ苦さを重ねたという◆その生の新サンマが、まだ6月というのに県内のスーパーに並んでいるのを見て驚いた。サンマといえば「秋の味覚」ではなかったか。近年、不漁続きと聞いていたが◆どうやら漁獲回復に向けて、水産庁が8~12月に制限していた公海での操業について一年を通じて漁ができるよう規制を緩和。これで例年より2カ月近く早くサンマ漁が始まり、「初夏サンマ」が出回ったようだ◆冒頭の「ハモ」「ハム」のやりとりは、考えてみると残酷である。同窓会の席に招かれた恩師である漢文教師(あだ名は「ひょうたん」)が、「結構なもんですなぁ」とうまそうにハモを食べる。今や社会的地位にある教え子たちは、漢字は知っているものの高級魚のハモを食べたことがない恩師に哀れみの視線を送るのだった◆ハモは7月にある京都の祇園祭に欠かせない「夏の味覚」。実は、当方もまともに口にしたことがない。だからというわけではないが、やっぱり安くてうまいサンマだ。資源を大事に、庶民の味を届けてほしい。(丸)

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