長崎県の国営諫早湾干拓事業の堤防排水門。手前は有明海、奥は調整池=2017年2月15日

 「信じられない」「これで幕引きなのか」。国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡る訴訟で「非開門」の判決が最高裁で初めて確定したことが明らかになった27日、佐賀県内の訴訟当事者の漁業者に落胆が広がった。最高裁に上告している別の訴訟では非開門に疑義を示す可能性が出ていただけに、真意をつかめない司法の判断に戸惑い、「期待はことごとく打ち砕かれる」と沈痛な表情を浮かべた。

 最高裁は残りの開門関連訴訟で、判決を見直す際に必要な手続きの弁論を7月26日に開く。法廷で意見陳述をするために準備を進めていた漁業者の平方宣清さん(66)=藤津郡太良町=は「司法が国の方を向いている。弱い立場の声はどうするのか」と不信感を募らせた。「開門調査をせず、干拓事業と漁業被害の因果関係が分からないまま終わりになるのか」と不安も吐露した。

 開門を命じた確定判決の訴訟当事者の漁業者大鋸武浩さん(49)=太良町=は「最高裁は弁論の後に判断すると思っていた。このタイミングで確定させたのは唐突で、どういう意図か分からない」と困惑する。漁業者側弁護団は「決定内容を精査中で、28日にも声明を出したい」と話す。

 諫早湾に近い県有明海漁協大浦支所(太良町)の弥永達郎運営委員長は「開門調査をして、漁場環境の変化の原因を究明してほしいというのが漁業者の思い。これからどうなるか分からないが、漁師たちが仕事を続けられるように国は有明海再生を成し遂げてほしい」と強調した。

 山口祥義知事は「弁論期日が設定されているこの時期に開門しない決定が出されたことに大変驚いている。有明海再生という本来の目的を見失わず、裁判の状況や国の動向を注視し、漁協に寄り添って対応していきたい」との談話を出した。

 

農相「主張認められた」

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡る訴訟で最高裁が潮受け堤防の排水門の開門を求めた漁業者側の上告を退けたことについて、吉川貴盛農相は27日、「国の主張が認められた」とするコメントを発表した。

 ただ諫早湾干拓事業では最高裁などでまだ別の訴訟が続いている。農相は今後も「一連の訴訟について、関係省庁と連携して適切に対応する」との考えを示した。【共同】

 

長崎知事「方向性示す」

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡る訴訟で、閉門維持の判断が初めて最高裁で確定したことを受け、長崎県の中村法道知事は27日、「最高裁が開門を認めないという方向性を示したと認識しており、県の要望にも沿ったものだ」とするコメントを発表した。

 「県として最も重要なことは、有明海の漁業環境の改善だ」と指摘し、今後も国への要望活動などを続けるとした。【共同】

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