150日間に及ぶ通常国会が閉幕し、与野党は7月の参院選に向け、事実上の選挙戦に入った。厚生労働省の統計不正、年金不安、アナウンスなき外交方針の転換など、次々と疑問や問題が表面化したにもかかわらず、言論の府は十分な情報を引き出し、政府側をただすことができなかった。行政監視の使命を果たせず、消化不良に終わったと言わざるを得ない。

 その最大の要因は、ひとえに「不都合な真実」を隠し、逃げるばかりの安倍晋三首相はじめ政府、与党の姿勢にある。野党の再三の要求にもかかわらず、衆参両院で3月下旬以降、予算委員会を開かなかったことが象徴している。

 しかも後半国会に入ると、野党の選挙準備が遅れていることを見透かすように、首相自らが衆院解散風を吹かせる。与野党議員とも浮足立ち、国会審議に身が入らなかったのも事実だろう。野党の攻め手を防ごうと、国会対策のために解散権をちらつかせたと批判されても仕方あるまい。

 前半国会の論戦で焦点となった統計不正。厚労省の特別監察委員会は、おざなりの調査に批判を浴び、やり直しに追い込まれた。その再調査結果も、肝心の不正の動機や長年放置してきた理由などを究明せず、担当課・室の説明を虚偽と認定しながら、組織的な隠蔽(いんぺい)を否定するという不十分な内容にとどまった。

 安倍首相は6月10日の参院決算委員会で「今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証し、信頼を取り戻していく」と答弁したが、不正を徹底的に検証した形跡はない。野党が「忖度(そんたく)」の疑いを向けた、共通事業所の2018年実質賃金伸び率の数字も、明らかにしないままだ。

 森友、加計両学園問題の核心の解明も全く進まなかった。国会冒頭で安倍首相は「さまざまな批判を誠実に受け止め、今後とも説明責任を果たしていく」と強調したものの、統計不正と同様、「言うだけ」だった。

 逃げの姿勢が顕著になったのは、老後の生活には約2千万円の蓄えが必要と指摘した金融庁の金融審議会の報告書だ。「100年安心」と呼んできた年金制度への不安が噴き出し、諮問した当の麻生太郎金融担当相(財務相)が「世間に不安や誤解を与えた。政府の政策スタンスとも異なっている」と、受け取りを拒否する事態に発展する。

 少子高齢化の進行に伴う給付水準の引き下げが避けられず、公的年金だけでは賄いきれないことを提起する内容だが、安倍政権はなかったことにしたのである。さらに、年金の給付水準などを点検、将来的な見通しを示す、5年に1度の財政検証の公表も先送りした。

 政治の役割の一つは、国民に安心を与えることだろう。「皆さんに安心してもらえる制度」(安倍首相)と胸を張るなら、堂々と情報を開示すればいい。それを逃げるから、国民の不安が広がるのではないか。

 参院選への影響を考慮するとトランプ米大統領が明かした日米貿易交渉の中身、従来の原則をかなぐり捨てた北方領土交渉…。外交課題についても、説明責任を果たしたとは言い難い。

 国会を通じてより鮮明になった安倍政治の体質・手法は、参院選の大きな争点となる。投票日まで、党首討論などを重ね、有権者に真の論戦を見せてもらいたい。(共同通信・橋詰邦弘)

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