米国がイランの最高指導者ハメネイ師に制裁を科したことで両国の対立の激化が予想されている。米無人偵察機の撃墜を受けて米国がイランへの軍事攻撃を計画、実施寸前でやめるなど軍事的緊張も高まっている。

 日本は安倍晋三首相が6月中旬にイランを訪問した実績を基に、28~29日の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で最大限の自制を米、イラン双方に求める国際合意を目指すべきだ。

 ハメネイ師は国家元首であり、元首に対する制裁は異例だ。米国は4月にイラン軍精鋭部隊である革命防衛隊をテロ組織に指定したほか、核合意立案などイランの対外関係を担うザリフ外相も近く制裁対象に加えると予告しており、イランを国家全体として締め上げる構えだ。

 世界を驚かせたのが、革命防衛隊が6月20日にペルシャ湾上空で米国の無人偵察機を撃墜したことの報復として、米国がイランのレーダーやミサイル発射施設など数カ所を21日に電撃的に攻撃する計画だったことだ。

 150人のイラン人が犠牲になるとの予測を聞いたトランプ大統領が「10分前に攻撃の取りやめを命じた」と明らかにしたが、米国がイランの軍事施設を攻撃すれば、イランが中東の米軍基地を反撃するのは必至とみられ、両国は本格的な衝突の寸前だったといえる。

 米メディアによると、前日の20日には米軍サイバー司令部がイラン情報機関やミサイル発射施設をサイバー攻撃している。

 今回の危機は、トランプ大統領が2015年に結ばれたイラン核合意から昨年離脱したことで始まった。米国は制裁を復活し、日本などは米国の要求を受けて5月初旬にはイランの収入源である原油の輸入を停止した。

 こうした中でペルシャ湾地域では5月中旬以降、タンカーへの攻撃やバグダッドの米国大使館近くへの砲撃、イランが敵対するサウジアラビアのパイプラインへの攻撃が相次ぎ、緊張が徐々に高まっていた。米国は空母や戦略爆撃機、部隊を同地域へ増派し、攻撃にいつでも踏み出せる態勢だ。米政権内では強硬派の筆頭であるボルトン国家安全保障問題担当補佐官が、イランを嫌悪するイスラエルを今週訪問したことも攻撃に向けた政策調整の可能性があると指摘されている。

 米国は15年の核合意が生ぬるいとして核開発の制限を強固にし、弾道ミサイル開発や中東の民兵組織支援も停止させる新たな合意を目指すというが、イランはトランプ大統領は信頼できないとして拒絶している。核合意を守っても何の利益もないとイランは近く、ウラン濃縮量増大など合意違反に踏み出す構えだ。

 安倍首相は米国とイランの対話の橋渡しを目指して、イランを日本の首相として41年ぶりに訪問しハメネイ師と会談した。訪問中にタンカー攻撃があり、ハメネイ師が米国の制裁対象となったことで、橋渡しの難しさが浮き彫りになった。

 しかし、このままでは軍事衝突が始まる懸念が拭えない。いかに困難でも外交の出番だろう。

 米国など世界の重要国が集うG20首脳会議が大阪で開催され、安倍首相は2国間会談も多くこなす。この外交のチャンスを利用して、米国、イラン双方に最大限の自制を促し、対話の糸口をみつけるよう国際社会として圧力をかけたい。(共同通信・杉田弘毅)

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