多久市先覚者資料館の廟山文庫展示室

 多久市先覚者資料館には、膨大な書籍がずらりと並んだ部屋があります。約4000冊に及ぶ、論語など儒学関係の書籍群「廟山文庫」です。これらの本はすべて、多久最後の漢学者といわれる大塚巳一(号・廟山、1896~1950年)が私財を投じて収集したものです。

 多久では17世紀末より、四代領主多久茂文によって学問所(後の東原庠舎)が設置され、多久聖廟が創建されるなど、儒学が盛んに学ばれるようになりました。しかし明治維新を迎えると、儒学は時代遅れの学問とされ、次第に顧みられなくなっていきます。

 しかし廟山は儒学研究にのめりこみ、関連の書籍を買い集めていきました。また、多久聖廟の保全や、聖廟の孔子像に供物をささげる「釈菜(せきさい)」の存続にも力を注ぎました。戦後、儒学への反発から聖廟の「焼き払い論」まで出る中、80歳近い高齢で目も耳も不自由ながら、夜ごと夜警に立って聖廟を守ったのです。廟山にとって、儒学を尊ぶことは多久を愛することでした。

 廟山の没後、廟山文庫は遺族によって大切に守られていましたが、92年に多久市へ寄贈されました。国内外の研究者がたびたび閲覧に訪れ、「孔子の里 多久」を学術的な面で象徴する貴重なコレクションとなっています。(志佐喜栄=多久市郷土資料館)

このエントリーをはてなブックマークに追加