公明党主催の集会で選挙協力をアピールする自民党現職の山下雄平氏(左から2人目)と公明党現職の河野義博氏(同3人目)=6月9日、佐賀市のガーデンテラス佐賀

 自民党佐賀県連の佐賀市の事務所を5月8日、党本部のある人物が訪問した。組織運動本部長の山口泰明衆院議員(埼玉10区)で、参院選の準備状況を聴取した。党本部は佐賀選挙区を厳しい戦いが予想される「激戦区」に指定している。「一生懸命やってください」。特段の指摘はなかったが、県連関係者は山口議員が来佐したもう一つの狙いに注目した。

 その夜、山口議員は旧知の間柄の山口祥義知事と立候補予定の現職山下雄平氏(39)、古川康衆院議員の4人で会食した。盛り上がり、山口議員が「山下をよろしく」と頼むと、知事は笑顔で応じた。山下氏は初当選した6年前の選挙でJAグループ佐賀の政治団体、県農政協議会の全面支援を受けたが、2015年の知事選では農政協が推した山口知事ではなく、自民推薦の対立候補の選対本部長を務めたことでJA、知事と距離が生じていた。

 「この4年半、頭の中は関係修復のことでいっぱいだった」と明かす山下氏。関係者は8日夜の会食について山口議員が「知事と山下氏の仲を取り持とうとしたのでは」と推し測る。実際、山口議員は昨年末の知事選で佐賀を訪れて知事を激励しており、これも参院選を見据えた布石だったとみられる。

 15年の知事選以降、農政協は国政選挙で自民候補に「自主投票」で対応してきた。山下氏は党の農林部会で積極的に発言、農協幹部とも接触を図ってきた。山口知事に対しても、昨年末の知事選で大半の決起集会で応援弁士を務め、県の要望活動にも汗をかいた。

 昨年末、山下氏の推薦を決めた農政協。金原壽秀会長は今年5月の山下氏の事務所開きで「推薦した以上、しっかり体制をつくり支援する」とあいさつしたが、関係者からは額面通りに受け止めていいものか、疑問視する声が上がる。

 JA全中(全国農業協同組合中央会)の副会長も務める金原氏。官邸主導の農協改革に対抗するため、自民党本部の農林族との関係を深めてきた。金原氏や農協幹部が選挙関係の集会のあいさつで必ず触れるのが、農林族の重鎮たちから「山下を頼む」と懇願されたというエピソードだ。農協関係者は解説する。「野党の低迷をみれば、自民党とけんかをしていても仕方がない。山下氏との関係に思うところがあっても、組織としては自民の候補を応援せざるを得ない」。関係者は、久しぶりに農政協が推薦に回る今回の選挙での票の出方に注目する。

 3年前に続き、佐賀選挙区では野党候補の1本化が実現した。これに先んじる形で自民、公明も県組織間の選挙協力を結んだ。

 公明はいつになく自民との連携に期待を寄せる。比例代表候補の現職河野義博氏(41)の当選が至上命令だが、今回、党の方針で大票田の福岡では河野氏の名前ではなく、政党名で比例投票を呼び掛けることになった。「危機感は強い」と佐賀県本部の中本正一代表。自民支持層から1万票の支援を見込み、前回と同様、県内で5万8千票の比例票獲得を目指す。公示前に県内で20カ所以上、集会を開き、山下氏や自民県議らを招いて協力関係をアピールする。

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 有力視される7月4日の公示まで2週間を切った参院選。佐賀選挙区(改選数1)は自民、公明が推す現職に、国民民主、共産、社民が支援する元職が挑む事実上の一騎打ちになる。決戦目前の事情を追った。

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