一筆啓上賞「日本一短い手紙」に以前、福岡の小学4年生の入選作があった。〈ぼくが生まれて十年だから、お母さんも十才ですね。まだまだいっしょにがんばろうね〉。近ごろ「子育て」という言葉を聞かない日はないが、育てられるのは子ばかりではない、とつくづく教えられる◆いつか東京の人混みで、大声で幼いわが子を叱る母親を見かけたことがある。羽田で飛行機が見たい、とせがんだ子に「理由をちゃんと説明しなさい」と厳しく問い詰めている。まだ小学校にも上がらない年頃で、泣く以外に言い訳は持っていないというのに。このお母さんの職場か何かの光景を見ているようで切なくなった◆親の体罰を禁じた児童虐待防止法などの改正案が成立した。「しつけ」と称した激しい暴力で子どもが命を落とす、痛ましい事件はもうたくさんである。親が子をこらしめ制裁することを認めた民法の「懲戒権」も見直しを検討するという。これからの親子関係は大きく変わっていくかもしれない◆こんな歌がある。〈子の目から大粒のなみだを搾りだしいつまでわたしは怒鳴っているのだ〉森尻理恵。子を叱って、感情的になることは誰にもある。それでも手を上げず、心理的に追い詰めず、子どもをしっかり育んでいく手立てを探したい◆〈まだまだいっしょにがんばろうね〉である。(桑)

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