♪ふるさとへ向かう最終に 乗れる人は急ぎなさいと やさしいやさしい声の駅長が 街なかに叫ぶ…。中島みゆきさんに「ホームにて」という歌がある。振り向くと、列車のドアは閉まりかけていて、明るい車窓で帰省客が笑っている。そんな切ない光景を日ごと思い描きながら、都会で生きる人もきっといるだろう◆大阪府吹田市の交番襲撃事件で、意識不明の重体となっている古瀬鈴之佑巡査(26)は近ごろ、故郷に帰ることはあっただろうか。母校の佐賀工高が近所にあるせいか、高校時代、どこかですれ違ったことがあるかもしれない、と思うと余計に容体が気にかかる。遠く離れた町で、住民の安全のために日夜汗を流していた若者に向けられた凶刃が、腹立たしくてならない◆まるで連鎖するように、各地で交番襲撃が相次ぐ。拾得物を届けに来たと装ったり、今回もうその110番通報で同僚が出動したすきを狙われた。日本の治安の良さを裏付けるシステムそのものが脅かされているようで、背筋が寒い◆高齢化が進む地域社会で、交番や駐在所は安心の命綱である。住民がさまざまな困りごとを持ち込む窓口を閉ざすわけにはいかない。安全で、もっと頼りになる存在に―難しい宿題である◆今はただ祈りたい。遠い街で深い傷を負った人が、元気な姿でふるさとに帰れる日を。(桑)

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