大阪府吹田市の交番で警察官が襲撃され、実弾5発入りの拳銃が奪われた。大阪府警は防犯カメラの映像などから東京在住の33歳の男を割り出し、強盗殺人未遂容疑で逮捕した。実弾1発が発射された形跡はあるが、人的被害は確認されていない。襲われた26歳の警官は包丁で胸や太もも、腕などを刺され、意識不明の重体となっている。

 大阪市で月末に20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催されるのを前に全国各地から応援の警官を集め、警戒を強化していたさなかで、政府内に緊張が走った。また男が拳銃を手に逃走し、近隣の自治体は公共施設を閉鎖したり、小中学校の部活動をやめたりするなど影響が広がった。

 昨年、富山市と仙台市で交番勤務の警官が襲われ、警察庁は拳銃を抜き取りにくくした拳銃入れの配備や防護服の常時着用、交番の警官複数配置など対策を進めてきた。ただ地域の安全安心の要である交番は住民に開かれた存在でなければならず、不審者に対する警戒を強めるといっても、対策にはおのずと限界があるとの指摘もある。

 だが、このようなことが繰り返されては、治安は根底から揺らぐ。男の動機はまだ見えてこないが、強固な殺意を持って凶行に及んだのは間違いないだろう。そのとき、どう対処するか。不安払拭(ふっしょく)へ、事件の検証と対策を尽くしてほしい。

 計画的な犯行とみられている。交番には警官3人が勤務。16日早朝に近くの私鉄の駅ホームにある公衆電話から空き巣被害の110番があり、2人が出動した。交番が手薄になった直後、もう1人の警官が襲われた。この警官は防護服を身に着けていたが、全身に7カ所以上の傷があり、左胸に包丁が刺さった状態で発見された。傷は心臓にまで達していたという。

 空き巣被害は確認されず、虚偽通報だった。拳銃を腰のベルトにつなぐひもの留め金具が外され、拳銃が奪われた。一連の事件を受けての対策として、新型の拳銃入れの配備が順次進められていたが、襲われた警官のものはまだ旧型だった。

 G20サミット前に容疑者逮捕となり、一般人にも被害が及ばず、政府も警察も地域住民も胸をなで下ろしているだろう。しかし二度とあってはならないことがまた起きたという厳しい現実から目をそらしてはなるまい。

 昨年6月、富山市では元自衛官の男が交番で勤務中の警官を刺殺。つりひもをおので切断して拳銃を奪い、近くの小学校正門前に居合わせた警備員の男性に発砲し殺害した。その3カ月後には仙台市の交番で、元大学生の男が警官をエアガンで撃ち包丁で刺殺した。この男は別の警官も襲おうとして、射殺された。

 警察庁によると、交番勤務の警官らが拳銃を奪われる事件は2013年以降、今回の大阪の事件を除き全国で8件が発生。うち5件で発砲されている。相手を取り押さえようとした警官が奪われた拳銃で撃たれ、重傷を負ったケースもある。

 地域住民に身近な交番・駐在所は昨年4月現在で全国に計1万2589カ所ある。その全てに短期間のうちに対策を行き渡らせるのが難しいのは容易に想像できるし、そもそも完璧な対策というものもないのかもしれない。それでも、何かできることはないか。日々問い返しながら、知恵を絞る必要があるだろう。(共同通信・堤秀司)

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