症状が始まってから今までの経過は、病気を診断する上で重要ですが、病気を除外する(否定する)上でも、非常に役立ちます。「症状はいつからですか」と尋ねたら、「若い頃から(何十年も前から)」とか、5年以上前からとか言われることもあります。高齢の方は、2~3年前からとか言われても、カルテを見ると7~8年前だったりします(笑)。

 かなり以前から症状があって、かつ、それほど悪化していないというのはどういうことなのでしょうか。悪い病気なら、どんどん悪くなっていくはずですよね。

 一つは、症状を時々繰り返すタイプの病気です。子どもの頃から繰り返している「ぜんそく発作」や「てんかん発作」などがこれに当てはまります。緊張するとおなかが痛くなって下痢をするという「過敏性腸症候群」や、以前腰を痛めていて、また最近痛くなったというような「腰椎椎間板ヘルニア」などもこれに該当するでしょう。

 もう一つは、「症状があるので正常とは言えないが、病気とは明確に言えないもの」です。「異常だけど病気ではない」とは、分かりにくいですね。医学の教科書に書いてあるような重大な病気ではない、と言い替えることもできます。

 医学はどんどん進歩していますが、進歩している領域と、そうでない領域があります。放っておいても命に関わらないものに関しては、亡くなって解剖をして調べる対象になりません。研究する人も少なく、診断も治療も発展しにくい領域となります。

 何年も悪化していないということは、がんなどの腫瘍によるものを否定する根拠となります。なぜならば、細胞は2倍、4倍、8倍と幾何級数的に増えていくからです。もし腫瘍によるものであれば、時間がたてばたつほど、どんどんひどくなっていくはずです。

 ものすごく長い経過で診断がついていないということは、悪い病気でない可能性が非常に高い、ということができますので、まずは安心してもらってよいかと思います。(佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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