庭先にこんもりと毬(まり)形に咲くアジサイ。白、青、紅…。花の色が刻々と変わっていく。暦の上では「入梅」を過ぎたが、県内は晴天続き。雨にぬれて彩りを増すアジサイにとって待ち遠しい梅雨入りだろう◆幻想的な小説で知られる泉鏡花が「森の紫陽花(あじさい)」と題して、アジサイのなんとも微妙な色合いに触れている。〈現(うつつ)に見ゆるまで美しきは紫陽花なり。其(そ)の浅葱(あさぎ)なる、浅みどりなる、薄き濃き紫なる、中には紅淡(くれないあわ)き紅つけたる〉―。浅葱は「緑がかった薄い青色」。やがて「濃い青紫」になり「紅紫色」へと姿を変える◆唐津市相知町の見帰りの滝で開かれている「あじさいまつり」。3年ほど前に訪ねた時は滝へと続くなだらかな坂道をのんびり歩いた。途中、川魚料理や瓦そばの店があり、滝の清涼感が心地よい。今週末が見ごろだそうだ◆地元の人によるとアジサイは土壌の酸性度によっても色が変化する。「七変化」という別名もある。しかし、政治の世界では一度世に出たものが色を変えたと思ったら、あろうことか「なきもの」となってしまった。年金に関する金融庁の報告書である◆都合が悪くなって摘み取られてしまったか。泉鏡花は〈石に添ひ、竹に添ひ、籬(まがき)に立ち〉と人の世に寄り添うアジサイを描いたが、咲かせる花もないとは。これでは人々の不安は募るばかりだ。(丸)

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