20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、反保護主義を声明に盛り込めず、米中貿易摩擦の激化に歯止めをかけることはできなかった。貿易・デジタル経済相会合も世界貿易機関(WTO)改革の必要性などでは合意できたものの、成果は乏しかった。

 こうした情勢ならば、月末のG20首脳会議(G20大阪サミット)に期待することは難しいかもしれない。財務相、貿易相それぞれの声明が打ち出したメッセージからは、自由貿易を維持しようという強固な意志を読み取ることができないからだ。

 このまま後退を続ければ、世界経済は不安定なままだ。閣僚レベルで踏み込み不足だった貿易に関する記述を首脳レベルで再検討し、G20として、自国利益最優先の保護主義に対抗する立場を再び明確にするべきだ。安倍晋三首相には議長としてリーダーシップを発揮して、この議論を主導することが求められよう。

 サミットに合わせ、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談が模索されている。米中首脳会談を実現させ、事態のさらなる悪化を食い止めることにも全力を挙げるべきだろう。

 主要国の指導者が一堂に会しても、世界経済最大の課題の解決に向け、実質的な影響力を発揮できないようであれば、事態は深刻と言わざるを得ない。この枠組みが機能しなくなれば、世界経済運営は軸を失い、漂流する恐れさえある。

 G20サミットは、2008年のリーマン・ショックに対応するために創設され、各国が協調して対応するバックボーンとして打ち出されたのが保護主義への強い対抗だった。しかし昨年、アルゼンチンのブエノスアイレスであったG20は、米国の強い要請に押され、声明から保護主義に関する記述をなくした。

 今回のG20は、国際協調のほころびを修復し、米中貿易摩擦を発端とする世界経済の乱調を収め、正常な軌道に復元させる道を切り開けるかどうかが最大の焦点だ。サミットで成果を上げるための下地づくりが財務相、貿易相会議では求められていた。

 財務相会議では、貿易赤字の解消を最優先とする米国の政策理念に影響を与えるために、貿易収支にサービス収支などを加味した経常収支に、政策の主眼を置く必要性も議論した。貿易相会合で協議したWTO改革では、紛争解決制度の機能改善や電子商取引(EC)ルールといった具体策にも踏み込んだ。

 いずれも米国、中国の政策の方向性などに一定の影響を与える可能性があるが、問題の根幹である保護主義の排除、自由貿易の維持・発展には切り込めていない。

 安倍首相は日本は自由貿易の旗手だと主張してきた。今回のサミットは、その主張に対する責任が問われる。トランプ大統領を説得することが鍵を握ろう。首相は大統領とは世界の指導者の中で最も親しいと自負している。何度も、ともにゴルフをし、4、5月には連続して首脳会談をしている。首相の方から言うべきことをためらう関係ではあるまい。

 日本は個別に米国との間で2国間の貿易交渉を進めている。G20での合意事項はトランプ大統領もないがしろにはできないはずだ。サミットの声明内容の後退は日本の貿易政策にも悪影響を与えることになる。(共同通信・高山一郎)

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