♪ああ 川の流れのように ゆるやかに いくつも 時代は過ぎて―。美空ひばりさんの名曲「川の流れのように」。時間の経過を大河の流れに例えて、自らの人生を振り返る。「カラオケでよく歌う」という人も多いかもしれない◆「時の流れ」には詩情豊かな世界が広がる。だが、物理学ではそもそも時間の「経過」という概念がないそうだ。時間は流れず、単に「存在する」だけだという。「先週があったと感じる唯一の証拠は、あなたがそれを記憶しているということだ。過去とは記録でしかない」。そんな学者の言葉がある◆なかなか理解することは難しいが、存在するだけという時間に、私たちは過去、現在、未来を重ねて思い悩む。記憶している過去に苦しめられる時もある。それが人の世ということだろうか◆〈世に住むこと二十年にして、住むに甲斐(かい)ある世と知った。二十五年にして明暗は表裏の如く、日のあたる所には屹度(きっと)影がさすと悟った〉。夏目漱石の『草枕』の一節は、時が教える人生の意味をつづる◆10日は「時の記念日」。天智天皇のころ、水時計「漏刻(ろうこく)」が日本で初めて使われたという日に由来する。時間に追われ、思わぬ事件や事故にうろたえる毎日だが、たまにはゆったりした時間に身を委ねる余裕を持ちたい。〈時の日や森に入りゆく人を追ふ〉坂口匡夫。(丸)

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