厚生労働省は、バブル崩壊後の就職難を経験した「就職氷河期世代」の支援策を公表した。この世代には、今なお不安定な就労や低い賃金水準を強いられている人が少なくない。官民が協力して支援を急がなければならない。

 支援策の柱は、今後3年間を集中支援期間として、都道府県が経済団体や業界団体と連携する新たな枠組みをつくり、実施計画や目標を設けて氷河期世代の採用や処遇改善を後押しすることだ。具体策として、民間業者に教育訓練を委託し、ハローワークに専門窓口を設ける。業界団体と協力して短期間での資格取得を支援し、企業への助成金も拡充する。

 政府は支援の対象を約100万人とし、3年間で正規雇用者を30万人増やす数値目標を定め、今月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に盛り込む方針だ。

 就職氷河期世代の苦しい状況については、社会の安定を揺るがす大きな問題として、かなり前から根本的な対策を求める声が上がっていた。政府が本格的な支援策をまとめるのは初めてだが、遅すぎたという批判は免れないだろう。

 就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1993年ごろから10年余りの時期に学校を卒業して社会に出た30代半ばから40代後半までの世代を指し、約1700万人いる。この時期の日本経済は、大手銀行が経営破綻するなど極めて厳しい状況で、企業は新卒者の採用を大幅に絞り込んだため、就職できない人や、アルバイトなど不安定な非正規雇用で働かざるを得ない人が増えた。

 経済財政諮問会議に提出された資料によると、2018年時点で35~44歳の年齢層ではフリーターが52万人、それ以外の非正規雇用が317万人に上り、非正規雇用の割合が他の世代よりも高い。連合総研の研究報告では、氷河期世代の大学卒・大学院修了者の平均給与は5歳上の世代の同年齢時と比べて大きく減っていることが分かった。

 そうした状況下で、この世代には引きこもりや長期失業者などの就労困難者もかなりいるとみられる。政府が支援に乗り出したのは、このまま高齢化が進めば、生活保護受給者の増加などが社会保障費の膨張を招く恐れがあるという危機感を強めているためだ。

 この世代の年長者はすでに50歳に近く、年齢を重ねるほど未経験の職に就くのは難しくなる。早急な支援が必要だ。政府が集中支援期間を3年間と区切ったのは妥当な判断である。しかし、支援策は基本方針を示しただけで具体性に乏しく、どれだけ効果を上げるかは見通せない。今後、いかに実効性ある具体策を打ち出すかが鍵となる。

 行政と企業双方が知恵を絞る必要があるが、ここは特に企業側の努力を求めたい。新卒一括採用の雇用慣行が、出発点でつまずいた人の就労を困難にしている。最近の人手不足で企業は新卒者の採用に苦労しているが、氷河期世代をはじめ多様な人材の確保に踏み出すべきではないか。行政側には、そうした企業を支援するきめ細かい施策を考えてもらいたい。

 政府には、氷河期世代向けにとどまらず、真の同一労働同一賃金の実現など非正規雇用対策の拡充に一段と力を入れてほしい。雇用の売り手市場が続いている今は、雇用環境改善の好機である。(共同通信・柳沼勇弥)

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