園児と一緒に遊ぶシニアの保育士=江北町の幼児教育センター

 佐賀県江北町の保育施設「幼児教育センター」で、シニア世代の保育士が活躍している。待機児童や保育士不足が社会問題となる中、保育士免許を持つ経験豊かな世代の再雇用が活路を開いている。一度現場を離れたシニア世代にとっても、孫世代に当たる園児を育てることで、新たなやりがいを発見する場所になっている。

 同センターに今春新設され、3歳未満児6人を受け入れている教室「ペンギンルーム」。園児が粘土を使った団子作りで遊んでいた。見守っていた保育士の大坪計子さん(71)は「まさかもう一度就職するとは思わなかったが、園児の成長を見ることは楽しい。孫を育てていた経験も生きている」と笑顔を見せる。

 大坪さんが現場復帰したのは30年ぶり。短大を卒業後、1968年から同町や北九州市の保育園などで勤務してきたが、夫の転勤をきっかけに退職していた。久しぶりの現場に「生活リズムが良くなって健康意識も高まった。やりがいもあるし、体力が持つ限り頑張りたい」と意気込む。

 同教室には60、70代の保育士4人と看護師2人が臨時職員として勤務し、1週間のうちそれぞれ3、4日ほどのペースで出勤している。他の保育士も「みんなで孫を育てているような雰囲気。園児から元気をもらっている」と口をそろえる。

 シニア世代の保育士が働く背景には、待機児童の解消を目指す町の姿勢が浮かび上がる。

 町では2016年度から毎年待機児童が発生していて、昨年度は3人の待機児童を抱えていた。今年4月には町内に民間の江北ひかり保育園(定員132人)が新設されたが、町全体の保育施設には町内外から想定を約60人上回る入所の希望があった。そのため、町は3歳未満児を受け入れる「ペンギンルーム」を同センターに開設させた。町で本年度、待機児童は発生していない。

 教室の開設などで保育の受け皿が増えた一方、町は急きょ、新たな保育士を探す必要に迫られた。卒業を控えた新卒学生は他の園への採用が決まり、確保に苦戦する中、保育士免許を持つ町内の経験者に白羽の矢が立ち、大坪さんらに声が掛かった。町こども教育課によると、本年度、町内の保育施設で勤務している保育士は68人で、このうち60歳以上の保育士は12人に上るという。

 同センターの吉田功所長(66)は「子どもとの接し方は他の保育士にとってもお手本になる」と期待する。人手不足が深刻な保育業界で、シニア世代が問題を解消する一助になりつつある。

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